中国政府は米中貿易交渉を通じて構造改革を進めてきた(写真:Sipa USA/amanaimages)
中国政府は米中貿易交渉を通じて構造改革を進めてきた(写真:Sipa USA/amanaimages)

 米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は5月6日、ドナルド・トランプ大統領のツイートを受けて、2000億ドル分(約22兆円)の中国製品に対する制裁関税を10日に25%に引き上げると表明した(現在は10%)。日本政府にも同様の方針を伝達しており、米国による中国へのプレッシャーはかつてなく高まっている。

 中国政府は現段階では抑制的な対応に努めている。中国外務省の耿爽副報道局長は6日の記者会見で、米中両政府が8日から米ワシントンで予定する閣僚級の貿易協議について準備を進めていると語った。

 中国ネットメディアの澎湃新聞は「協議は激しさを増すが中国の態度は変わらず」とする論説を掲載している。中国国営の新華社通信が同記事をトップページに転載しており、中国政府のスタンスを読み取るには格好の題材と言えるだろう。論説の骨子を要約すると以下となる。

①交渉最終盤になってからの発言に特に驚きはない。トランプ流の交渉術との見方も多い。実際には関税引き上げによって米国の農業従事者や企業、消費者が痛みを引き受けることになる。米国業界団体で構成するロビー団体「Tariffs Hurt the Heartland」は米国で100万人の雇用が失われ、金融市場も混乱すると警告している。

②これまで中国が低姿勢だったのは様々な状況に対する準備ができていたからだ。この1年以上で得た経験は、関税引き上げの影響はコントロール可能であることを示している。2019年第1四半期の経済データも中国経済の粘り強さを示している。

③中国の市場開放と質の高い発展という政策は変わらない。「戦いたくはないが、戦うことを恐れはしない。必要があれば戦う」という中国の態度は変わらない。

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