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 ドナルド・トランプ米大統領は5月5日、2018年12月から続けてきた中国との貿易協議の進捗が「遅すぎる」として、同国製品2000億ドル分に課してきた10%の関税を今週金曜日(10日)から25%に引き上げると自身のツイッターで表明した。

対中貿易で強硬姿勢を見せるトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 これにすぐに反応したのが米株式市場だった。翌6日のダウ工業株30種平均は反落し、一時は前週末比471ドル(1.8%)安まで下げた。しかし、その後、戻し、同66ドル(0.25%)安の2万6438ドルでこの日を終えた。

 「トランプ大統領は中国に対する彼の立場を1インチも変えないだろう」。こう話すのは、トランプ大統領のスピーチライターを務めた経験を持つある関係者だ。「トランプ大統領は対中貿易協議についてかなり本気だ。米国にとって不利な結果に終わるくらいなら決裂した方がましとさえ思っている」とみる。

 実際に関税を引き上げるかについては「単に交渉の道具と考えている可能性が高い」(同氏)。6日の株価が下げ止まったのも、同様の見解が投資家たちの間に広がったからだと考えられる。

トランプ氏、強気のワケ

 なぜトランプ大統領はここまで強気になれるのか。最も大きな理由は、米国が中国に対して強硬姿勢を貫くことを支持する人が、共和党支持者にとどまらず米国内に数多くいることにある。

 トランプ大統領と2兆ドルのインフラ投資法案で「歴史的合意」(関連記事)に至るまで、敵対することが多かった民主党のチャック・シューマー上院院内総務。同氏でさえ「中国にタフな姿勢を貫け」と自身のツイッターでトランプ大統領に賛同した。さらに、普段はトランプ政権に批判的な米MSNBCの看板アナウンサーですら、関税引き上げのニュースを読みながら「中国は問題が多く、閉じた市場を開放するなど是正すべきだ」とのコメントを付け加えている。

 トランプ大統領の振る舞いは一見、ライバルである中国に、関税の引き上げを道具に子供じみたけんかを売っているかに映る。だが、実際はそうとも言い切れない。同大統領が中国に求めるのは、彼が考えるところの「フェアな貿易」。閉ざされている市場を開かせることを主な目的としており、徐々にその成果も出始めている。

 例えば、2019年3月の全国人民代表大会(全人代)で中国政府は、外資企業に対する技術移転の強要を禁じる外商投資法を成立させた。この恩恵は米国企業だけでなく、日本企業を含む全ての外資企業が享受することになる。

 米国民の多くがトランプ大統領の強硬姿勢を大筋で歓迎している理由がここにある。