どこまでも諦めない人物である。
4月30日夕方に発表されたモーター大手、日本電産の2020年3月期決算。売上高は1兆5348億円で過去最高となったが、前期比わずか4%増にとどまった。営業利益は同14.6%減、最終利益は同45.4%の大幅減に沈んだ。

数字だけ見れば厳しい決算だ。決算会見に臨んだ永守重信・会長CEO(最高経営責任者)も厳しい表情を見せていた。しかし永守会長は時折笑みを浮かべながら、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が急激に縮小する中、不況を乗り越え、再成長する対策を仕込んだという自信をのぞかせた。
2020年3月期 | 前期比増減率 | |
---|---|---|
売上高 | 1兆5348億円 | +4.0% |
営業利益 | 1103億2600万円 | -14.6% |
最終利益 | 600億8400万円 | -45.4% |
営業減益の主な要因は、期中に進んだ円高と、事業の3本柱の1つである車載事業の中核として伸ばしている電気自動車(EV)向けトラクションモーター事業への先行投資を積み上げたことだった。最終減益が大きくなったのは、欧州のコンプレッサー事業会社を2019年に売却したことによる損失が主な原因だ。18年春に合意した米コンプレッサー事業の買収に伴い、欧州委員会の認可を得るために売却した。
円高やコンプレッサー会社の売却損を一時的な要因とすれば、EV用モーターのコストは前向きな投資と言える。だが、復活に向けた仕込みはそれだけではなかった。
EV用モーター投資を1つ目とすると、2つ目は08年秋のリーマン・ショック後の世界的な需要崩落の際に始めた徹底したコスト削減策「WPR(ダブル・プロフィット・レシオ)」の再発動だ。「売上高が半減しても利益を出せる体質作り」(永守会長)を目標に掲げた取り組みで、リーマン時には社員から30万件に及ぶコスト削減策を集めて危機を乗り切った。
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