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 中国政府が主催した広域経済圏構想「一帯一路」の首脳会議が4月27日、閉幕した。日本を含む150カ国以上が参加し、37カ国が首脳級を派遣。会議期間中に中国企業が主体になって640億ドル(約7兆円)余りの事業協力に合意した。

「一帯一路」構想を推し進める中国の習近平国家主席(写真:AP/アフロ)

 一帯一路をめぐっては、途上国が借金を返せずに重要インフラが中国に差し押さえられる「債務のワナ」と呼ばれる問題が顕在化し、覇権主義への警戒感と相まって国際的に批判が高まっていた。例えばスリランカは中国からの借り入れで港湾を整備したが返済不能に陥り、中国国有企業に99年間の運営権を譲渡している。

 債権者である中国は、いずれにしても新興国への経済影響力を強められる構図にある。加えて中国の銀行による貸付を受け入れるプロジェクトで、中国企業が落札するのに有利な状況が作り出せる。習近平(シー・ジンピン)国家主席が閉幕後の記者会見で述べた、「国際ルールや標準を幅広く受け入れることを支持する」との発言は、これらの批判を意識したものだ。債務のワナは一帯一路で初めて生じた問題というわけではなく、これまでも新興国での開発プロジェクトでは指摘されてきた。その防止のために作られた国際ルールを順守する姿勢を、中国が示したことは前向きに捉えるべきだろう。

中国経済軟着陸のための欠かせない受け皿

 中国がここまで一帯一路を推し進めるのは、減速する自国経済の軟着陸のためには経済圏を膨張させる以外ないという事情があるからだ。中国はリーマン・ショックの際に4兆元(当時のレートで約57兆円)もの経済対策を実施して世界経済の復活に一役買ったが、同時に過剰生産能力を抱え込むことになった。自国の内需拡大や構造改革だけでは過剰の解消には足りず、受け皿の拡大が欠かせない。

 今回の首脳会議には日本からは自民党の二階俊博幹事長が出席している。昨年、安倍晋三首相が訪中して習国家主席や李克強首相と会談した際には日中は「第三国協力」で合意しており事実上、一帯一路に協力する姿勢を示している。

 中国が国家戦略として一帯一路を進める以上、そこに関与しないという選択は経済的側面からはあり得ないだろう。ただし、やはり米中対立の行方は注視しなければならない。現在進行中の米中貿易協議がまとまったとしても、米中の緊張関係は経済や安全保障など様々な場面で長期にわたって継続していくことになるはずだ。日本は現時点では比較的うまく立ち回っているように見えるが、一夜にして状況が一変するリスクがあることは想定しておかねばならない。

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