ICカードの自動改札には慣れが必要か

混雑する切符売り場。発券機が故障していたため窓口に乗客が殺到した
混雑する切符売り場。発券機が故障していたため窓口に乗客が殺到した

 切符は非接触型のICカードだから、窓口の販売員は乗客から降車駅を聞き、1枚ずつそのデータをカードに読み込ませなければならない。時間がかかるため、列は遅々として進まない。結局、切符を購入するまでに40分近くを要した。

窓口のガラスには「シングルチケット(片道切符)」という張り紙がいくつも貼られている。料金は12駅先のルバック・ブルス・グラブ駅までで14000ルピア(約110円)だ
窓口のガラスには「シングルチケット(片道切符)」という張り紙がいくつも貼られている。料金は12駅先のルバック・ブルス・グラブ駅までで14000ルピア(約110円)だ

 切符売り場を仕切るガラスには「シングルトリップ」という文字が書かれた張り紙がいくつも張られていた。「インドネシア初の地下鉄ということで、開業から間もなくは物珍しさから何度も往復する乗客が相次いだ」。ODAを実施した国際協力機構(JICA)でMRT開発を担当している安達裕章氏はこう説明する。切符は片道専用のため、目的の駅以外で降りることはできない。ただ当初はそれが認知されなかったため、往復した客が乗車時と同じ駅で降りようとして改札を抜けられず混乱が起きてしまった。これを防ぐため「シングルトリップ(片道)」であることを強調しているわけだ。複数回乗降車できるカードについては現在準備中で当局の認証を待つ段階にある。

ソニーの非接触型ICチップ「Felica」を搭載した乗車カード。窓口では領収書も渡してくれる
ソニーの非接触型ICチップ「Felica」を搭載した乗車カード。窓口では領収書も渡してくれる

 乗車カードはJR東日本のSuicaなどと同様、ソニーの非接触型ICチップ「FeliCa(フェリカ)」を採用した。他にも別規格のICチップを搭載したインドネシアの銀行のキャッシュカードを乗車カードとして利用できる。ただ「インドネシアの銀行系カードは読み込みが若干遅い」(安達氏)ため何度も改札機のセンサーにカードを読み込ませようとしてエラーが発生することも多かった。改札を抜けた乗客がその後ろに並ぶ家族にカードを回して通り抜けさせようとするハプニングも多く発生。こうしたことから、開業当初は改札前に長蛇の列ができた。足元ではカードの利用法について認知され始めたが、それでも改札前でとまどう乗客はまだ多い。ジャカルタの人々が自動改札に慣れるにはもう少し時間がかかるかもしれない。

改札では乗客がスムーズに改札を通り抜けられるよう、警察官が丁寧に案内をしていた
改札では乗客がスムーズに改札を通り抜けられるよう、警察官が丁寧に案内をしていた

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