新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、依頼が殺到しているのが消毒業者だ。PCR検査で陽性と判明すると、患者の居住スペースや就業場所など、あらゆる場所で消毒措置が取られる。「崩壊するのは医療現場だけではない。消毒の現場も崩壊寸前だ」と、大手の消毒業者は嘆く。連日、保健所や不動産の管理会社から消毒の依頼や相談が舞い込む。

 とはいえ、人手の確保は容易ではない。「単独では対応しきれず、仕事仲間に声をかけて何とか対応している」と前出の消毒業者は打ち明ける。

 大規模な感染症の流行に不慣れな人がほとんどの日本。不要不急の外出は避けていても、食材の買い出しなど感染するリスクはある。感染が判明した場合の消毒だけでなく、不安に駆られて消毒を依頼する一般家庭も少なくないという。ただ、こうした不安心理に付け込み、新手の詐欺も発生しているという。

 複数の大手不動産業者に聞くと、オフィスビルの貸出先企業などで感染者が出た場合は、保健所や管理会社を通じて消毒を業者に依頼するという。まずは陽性患者の動線を企業側に確認。オフィス内などの専用部分をどう消毒するかは企業が保健所や業者と相談し、トイレやエレベーター、廊下などの共用部分は管理会社が消毒する場所を相談して決めるのが一般的だ。

 感染症に限らず、不動産管理会社には日ごろから付き合いのある消毒業者があり、そこに依頼するか、または保健所の紹介などから業者を選定することが多いという。

 不動産業者が利用実績のある大手の消毒会社として名前を挙げたのはシー・アイ・シー(東京・台東)やイカリ消毒(東京・渋谷)、大東化研(埼玉県川口市)、日栄商工(東京・目黒)などだ。消毒だけでなく、害虫駆除なども手掛ける企業が多い。

 各社とも「守秘義務もあり、どこで消毒を実施したかや仕事量の増減についてはコメントができない」というスタンスだ。

 ただ、ある業者は「オフィスの消毒が中心だったが、一般家庭などの消毒の依頼や相談が増えつつある」と明かす。緊急事態宣言が発令され、テレワークに対応する企業が増えている。そのため、オフィスの消毒依頼は減少傾向にあり、代わりに増えているのが一般家庭だというのだ。

 家庭内での感染増加に伴い、新手の詐欺も発生している。消費者庁・消費者政策課の新垣和紀氏によると、3月あたりから消毒に関する詐欺の相談が目立つようになっているという。

 保健所や消毒業者の名を語り、「近隣で感染患者が発生した。消毒するので住所を教えてほしい」という電話がかかってきた例や、「感染予防のために消毒を」と訪れた自称「業者」から法外な請求を受けたという例も。在宅状況を聞きだし、強盗に押し入る「アポ電(アポイントメント電話)詐欺」のような相談も消費者庁には舞い込んでいる。

 人の不安に付け込んだ詐欺の横行。感染患者が出た場合の対処手段として、消毒業者の幹部は「ネットで検索して業者を探すのは危険。近隣の保健所に相談して紹介を受けるべきだ」とアドバイスする。保健所は日ごろから近隣の業者と付き合いがあるため、適正な業者を紹介してもらいやすい。

 ただ、これだけ消毒需要が逼迫している今、紹介してもらう業者が対応できない可能性もある。また、保健所はコロナ禍の対応で手いっぱいの状況だ。感染を疑う人の相談でも電話がつながりにくいという中で「不要不急な相談」は慎むべきだろう。感染者が出た場合に限り、保健所や不動産管理会社の指導やアドバイスを受けて消毒を依頼することが、詐欺や混乱を防ぐ自衛の策にもなりそうだ。

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