日本百貨店協会が3月の全国百貨店売上高を発表した。74社205店の売上高総額は3403億円。新型コロナウイルスの影響を受け、前年同月比33%減だった。6カ月連続でのマイナスとなる。
百貨店各社は新型コロナの感染拡大を防ぐため、3月上旬から首都圏を中心とした店舗の臨時休業や営業時間の短縮に踏み切っていた。学校の卒業式や入学式が中止となり、衣料品の売上高は前年同月比40%減。バッグやアクセサリーなどの身のまわり品もおよそ4割の売り上げ減だった。
4月7日の緊急事態宣言発令以降、臨時休業や営業時間短縮は全国の百貨店に広がっている。4月は3月以上の減収がほぼ確実だ。

新型コロナで姿を消したインバウンドの3月の購買客数は調査対象店舗で前年同月比93.4%減、免税売上高は85.7%減となった。全国百貨店の2019年の年間売上高が既存店ベースで前年比1.4%減だったのに対し、インバウンドの売り上げは同2.0%増。売り上げを計算できる数少ない分野が断たれてしまい、新型コロナの収束後にインバウンド需要が戻るかどうかも読めない。
コロナ禍に見舞われなくても、百貨店への逆風は強まっていた。今年4月には百貨店を主要販路とするアパレル大手オンワードホールディングス(HD)が、前期に続き21年2月期にも国内外で約700店を閉鎖する計画を公表。ネット通販(EC)への切り替えを進めるためだが、ほかのアパレルメーカーも追随すれば、百貨店は主力商材の多くを失ってしまう。
構造問題に追い打ち
消費増税も重なり、店頭の販売が弱含んでいたところにコロナ禍が追い打ちをかけた。売上高が急落しただけでなく、危機が訪れた時期も悪かった。各社が基幹店への大型投資を重ねていたためだ。きめ細やかな接客や富裕層とのつながりという強みを生かしてビジネスを立て直そうとしているさなかだっただけに、コロナショックが各社に与えたダメージは大きい。
基幹店は改装ラッシュだった。三越伊勢丹ホールディングス(HD)は18年10月の日本橋三越本店のリニューアルに続き、20年3月期には伊勢丹新宿店も改装している。高島屋も19年秋から玉川高島屋S・Cの刷新を始め、滞在時間を重視した店づくりを進めてきた。
今年3月は多くの百貨店で、美容部員が顧客にメークやスキンケアを施す販売法(タッチアップ)を中止している。優良顧客の家を回って商品を提案する外商の販売員も、多くが自宅で待機している。
小売り業の多くは対面の販売が難しいため、ECへのシフトを急いでいる。しかし、高島屋の国内百貨店事業の売上高に占めるEC売上高の比率が約2%にとどまるなど、各社のEC売り上げはまだわずかだ。ECで求められるのはまず価格。ネットに消費が移行したときに、現状で百貨店はほかの業態に太刀打ちできない。
現在も食料品フロアに限って営業を続けている百貨店は多い。物産展などのイベントが中止・縮小に追い込まれたことで全国百貨店の3月の食料品売上高は前年同月比24%減となったが、生鮮食品に限れば13%減にとどまる。
店舗への顧客の信頼は依然として強い。だが、アフターコロナも含め、百貨店ビジネスの次の手は見えていない。3割減となった3月、さらに打撃を受ける4月の数字以上に、強みの対面サービスを封じられた状況が、先行きへの不安を増大させている。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?