ソニーは4月26日、2020年3月期の連結営業利益(米国会計基準)が前期比9%減の8100億円になる見通しだと発表した。19年3月期まで2期連続の最高益を更新してきた勢いにいったんブレーキがかかる格好だ。音楽事業での一過性の利益がなくなる上、発売から5年がたつ家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の販売減が響く。それでもソニーはゲーム事業で稼がないといけない理由がある。

PS4は発売から5年。次期モデルへの関心が高まる(写真:ロイター/アフロ)
PS4は発売から5年。次期モデルへの関心が高まる(写真:ロイター/アフロ)

 「立ち上げコストについて答えると、発売時期を話すことになる」。26日の決算会見でソニーの十時裕樹最高財務責任者(CFO)が明言を避けたのは、PS4後継機の発売時期だ。米国ネットメディアがPS4後継機のスペックを詳細に報じるなど、市場の関心も高いが、十時CFOは口をつぐんだ。

 PS4後継機の投入は20年と目されている。米グーグルや米アップルもゲーム事業に参入する方針を示しており、後継機はこうした巨大プラットフォーマーとの競争にもさらされる。9000万人以上のPS4ユーザーをつなぎとめながら、後継機でどれだけ利益を伸ばせるかは、ソニーが1兆円以上の営業利益を目指す上で重要な要素なのだ。

 カギはゲーム事業で確立した「リカーリングモデル」が握る。ハードウエアを起点に関連サービスやソフト販売で稼ぐ仕掛けだ。次世代機の投入も見据えながら、このリカーリングモデルでどう稼ぐか。さらに、ソニーにとっては、このモデルの全社展開も欠かせない。

 ソニーはすでに手を打っている。4月1日付人事がそれを象徴している。ソニーのゲーム子会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で社長を務めていた小寺剛氏が副社長になり、副社長のジム・ライアン氏が社長に昇格したのだ。一見すると降格人事のようにも見えるが、小寺氏はソニー本体の常務を務め、ゲーム事業で確立したリカーリングモデルを全社に広げる役割を担う。

 「人に近づく」(吉田憲一郎社長)ことをビジネスの軸と据える今のソニー。セグメント別の開示でも一番先に出すゲーム事業は、「人に近づく」コンセプトを最も体現している事業といえる。20年3月期はいったん利益水準が下がるが、もう一段高みを目指すには、まずは次世代機を軸としたゲーム事業で稼ぐ力を磨けるかが勝負となりそうだ。

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