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 医療系スタートアップのAntaa(アンター、東京・中央)は2019年4月、島根県海士町と連携協定を結んだ。協定の中身は、アンターのサービスを使ってネット上で医師同士が症状に関する質問をできるようにし、医師の仕事の負担を軽減することを目指すもの。人口約2300人の町民に対し2人のドクターが支える地方の医療を、持続的なものへと変革できるのか。医療業界に横たわる労働問題の解決する一つの「処方箋」として、この取り組みは大きな可能性を秘めている。

 「先生、腰が痛いんですけど」「ちょっと喉が痛くて」。海士町の病院には次々と患者が訪れる。勤務する2人の医師は海士町に20年以上住むとはいえ、すでに還暦を越えている。プライベートの時間はほとんどなく、日々、患者のことを気にかけている状態だ。

 医師たちが身を削って医療の現場を支えるのは、いまに始まったことではない。

 「患者の命を預かるから」など、仕事の特殊性に隠れていた医師の長時間労働の問題に、ようやく光が当てられるようになってきた。今年3月末に厚生労働省が開いた検討会は2024年度から適用する医師の残業時間規制について、最大で年1860時間(休日労働を含む)まで認める報告書をまとめた。具体的な上限規制が決まったとはいえ、一般労働者が年720時間の規制なのに比べると基準は緩やかなものだ。

 医師の長時間労働を簡単に解消できないのには様々な要因がある。

 都市部や一部の診療科に医師が偏在し、しわ寄せがきてしまう。また、それぞれの医師が大量の事務作業を抱えることになる。

 その上、当直勤務では専門以外の患者へ対応が必要になるため、自分で調べて専門の医師へと紹介することもあれば、緊急の場合には自ら別の医師に連絡する必要がある。

 そこで活用するのがアンターのサービスだ。

 アンターのサービスはいわば医師たちのフェイスブックのようなもの。「頭部画像の分類について聞きたいのですが」と専用サイト上に画像を張って質問すれば、10分以内に専門の医師たちが回答する。「僕は検査すべきだと思うな」「僕は手術すべきではないと思う」など次々と意見を得られる。これまで、まずは自分で調べるか、専門の医師に電話をかけ患者に処置をしていたため、適切な判断を下すまでに1時間以上かかっていた。アンターのサービスを利用すれば、最短10分程度で済む。