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 キリンホールディングスは2019年4月24日、ヘルスサイエンス事業戦略を発表した。事業創造部をヘルスサイエンス事業部に名称変更し、同部で手掛けていたiMUSEブランドの製品を中核に事業を拡大。2018年55億円だった売上高を、2021年150億円、2027年には230億円に伸ばす目標を掲げる。

ヘルスサイエンス事業部の佐野環部長

 iMUSEは2017年秋に立ち上げたブランドで、グループ企業である小岩井乳業と共同で開発した独自の機能性乳酸菌「プラズマ乳酸菌」を配合した飲料、ヨーグルト、サプリメントなどを販売してきた。今後は第2弾として、やはり小岩井乳業と開発した独自の機能性乳酸菌である「KW乳酸菌」を配合した商品を展開する。今後の事業拡大を支えるため、プラズマ乳酸菌とKW乳酸菌を製造する工場「iMUSEヘルスサイエンスファクトリー」を、小岩井乳業東京工場内に20億円を投じて建設し、4月25日に稼働させた。これにより、これまでは外注していた乳酸菌の製造を、自社でできるようになる。

 ヘルスサイエンス事業部では、ヤクルト本社のグループ会社から譲り受けた「ノアレ」というブランドのKW乳酸菌配合サプリメントも4月から取り扱っている。実はこのサプリメント、もともとキリンのグループ会社で扱っていたが、ヤクルトとの合弁を経て、権利はヤクルト側に渡っていた。そのブランドを買い戻し、20億円を製造工場に投じて発信したかったメッセージは、キリンが未病・予防の事業に本腰を入れたということだろう。

 キリンは2019年2月に発表した長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」の中で、「食から医にわたる領域での価値創造」のビジョンを掲げ、同時に発表した2019年-2021年中期経営計画の中で「医と食をつなぐ事業」の立ち上げ、育成を打ち出した。国内酒類市場の縮小傾向が続く中、将来の成長機会として食品と医療の中間にある未病や予防のニーズに応える事業に注力していこうというわけだ。

 幸いグループ内には製薬企業である協和発酵キリンがあり、その子会社の協和発酵バイオがサプリメントを幅広く手掛けてきた。2月にキリンは協和発酵キリンから協和発酵バイオの95%の株式を取得し、「医と食をつなぐ事業」の中核に位置付けることを表明している。

 ただ、キリンとしてもこれまでにプラズマ乳酸菌とKW乳酸菌という2つの機能性素材を独自開発し、免疫関連の機能性研究を重ねてきた経緯がある。そこでこの2つの素材に光を当てることで、未病・予防分野でサイエンスをベースにした事業を展開する姿勢を示した。ヘルスサイエンス事業部の佐野環部長は「私たちのサイエンスを顧客に届けたい」と繰り返し、自社の研究に裏付けられた製品であることを強調した。2019年6月には東南アジアに研究拠点を開設するとも説明し、「このサイエンスを国内だけでなくグローバルに展開したい。現地の研究機関と連携して何か貢献できないかと考えている」とも語った。

 もっとも、「免疫研究に強い」ということを強調するために、協和発酵キリンの抗体医薬や、米国の免疫学研究の拠点として著明なラホヤ免疫アレルギー研究所の設立に30年前に関わったエピソードまで持ち出されると、キリンの現在の研究力がどの程度なのか、むしろ疑問も生じてしまう。第3、第4の独自機能性素材を世に出して、“サイエンスの力”を示すことにも期待している。

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