
中国の配車大手の滴滴出行とソフトバンクの合弁会社であるDiDiモビリティジャパン(東京・港)は4月24日、東京と京都でタクシー配車サービスを始めると発表した。同社のサービスはこれまで大阪府でのみ利用可能だったが、2019年度内に北海道や兵庫県、福岡県などさらに10都市でサービスを開始する予定だ。主に訪日客による需要の高い地域で、先行するジャパンタクシー(東京・千代田)などを追う戦略だ。
同日、都内で開いた記者会見でDiDiモビリティジャパンの菅野圭吾副社長は「国慶節や春節など訪日する中国人観光客を取り込んでいきたい」と述べた。滴滴は全世界で5億5000万人のユーザーを抱え、中国で使われているスマートフォン(スマホ)のアプリを日本でも使用できる強みがある。年間約830万人が訪れるとされる中国人観光客を呼び込める可能性があるだけに、国内のタクシー事業者にとっても魅力的なプラットフォームだ。滴滴は日本ではタクシーの配車サービスを2018年9月に開始した。米ウーバー・テクノロジーなどに比べても後発となるものの、滴滴出行のノウハウや提携するスマホ決済「ペイペイ」との相乗効果で巻き返しを図る。
日本ではタクシー事業者の反発もあり、規制でライドシェアが認められていない。そのため滴滴やウーバーなど世界のライドシェア大手はタクシー事業者と組み、まず配車サービスで存在感を高めようとしている。欠かせないのはパートナーとなる各地のタクシー事業者だ。
タクシーの配車サービスでは既に日本交通系のジャパンタクシーが47都道府県に展開するほか、ウーバーも地域ごとに第一交通などタクシー大手と提携している。ディー・エヌ・エー(DeNA)やソニーの新会社なども配車サービスに参戦し、タクシー事業者の囲い込み競争が激しくなっている。
DiDiモビリティジャパンはこの日、パートナーとなるタクシー事業者がいるのかどうかを明かさなかった。同社の菅野副社長は、「我々と競合の両方の配車サービスをタクシー会社が使うといったこともありえる」と話し、他陣営のタクシー事業者にもプラットフォームを提供する考えを示した。滴滴が中国での圧倒的な強さを日本でも発揮できるかどうかは、各地で有力なパートナーを獲得できるかどうかにかかっている。
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