日立製作所は4月24日、産業用ロボットを活用した生産・物流システム事業を手掛ける米JRオートメーションテクノロジーズを買収すると発表した。買収額は14億2500万ドル(約1582億円)で、2019年度中にも買収を完了させる。JRオートメーションが培ってきた技術やノウハウ、顧客基盤を取り込む日立の狙いは何か。

「JRオートメーションの技術者との交流も進め、社内の人材育成にもつなげたい」と話す日立製作所執行役副社長兼日立産機システム会長の青木優和氏
「JRオートメーションの技術者との交流も進め、社内の人材育成にもつなげたい」と話す日立製作所執行役副社長兼日立産機システム会長の青木優和氏

 ロボットを活用した生産・流通システムの需要は世界的に広がっており、世界の市場規模は年10%以上の成長を続けている。2023年には1660億ドルまで拡大するとの予測もある。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど、世界の製造業のメーンプレーヤーがしのぎを削る分野だ。

 日立もあらゆるものをインターネットにつなぐIoT基盤「ルマーダ」事業を展開し、新市場の開拓を進めている。2019年度3月期での同事業の売上高は1兆800億円を見込み、日立の重点領域のひとつになっている。

 同事業を強化するために日立が積極化しているのがM&A(合併・買収)だ。今年3月には自動車向けに産業用ロボットを活用した生産ラインを設計・製造するケーイーシー(岐阜県各務原市)をグループ傘下に収めている。今回JRオートメーションを買収したのは「豊富な実績、高い技術力、リピート率の高い顧客基盤を持っている」(日立の執行役副社長兼日立産機システム会長の青木優和氏)ためだ。

 JRオートメーションは1980年の設立で、2018年の連結売上高は約670億円。自動車や航空機、医療機器の製造や物流などの分野で、産業用ロボットを活用して生産・流通システムを自動化するサービスを提供する。日立の持つ制御技術やルマーダ事業の資産をJRオートメーションの技術と組み合わせることで、高度な産業用ロボットシステムを構築してシナジー効果を生み出す考え。北米での事業拡大に弾みをつけ、21年度までに北米のインダストリーセクターで1300億円超の売り上げを目指すという。

 今後も同分野での成長加速に向け、積極的に資金を投じるという日立。デジタル技術と融合した新たなモノづくりを顧客に提示することで、GEなどとの競争を勝ち抜けるか。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。