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2019年1月17日、19年3月期業績見通し発表後に会見する日本電産の永守重信会長(写真:共同通信)

 「46年間経営してきて月単位でこんなに(受注が)落ち込んだのは初めてだ」。日本電産の永守重信・会長CEO(最高経営責任者)が中国の景気急減速で、従来の増益予想を一転、減益見通しに変えたのは2019年1月半ばのこと。

 23日に発表した同社の2019年3月期決算は、その見通しどおりとなった。売上高は2.0%増の1兆5183億円で過去最高となったが、営業利益は前期比16.9%減の1386億円、純利益は同15.3%減の1107億円だった。当然ながらここに驚きはないが、同時に公表した2020年3月期見通しは売上高が8.7%増の1兆6500億円、純利益は同21.8%増の1350億円というV字回復だった。

 あえて言えば「やはりな」である。長年、日本電産と永守会長の取材を続けてきたが、異変が起きて悪い業績を出すときは徹底してコストを掛け膿(うみ)を出そうとする。そして短期間にその分を取り返してみせる。減益は次の大幅回復を狙った上なのである。

 今年1月の時点では、2019年3月期の構造改革に約240億円を掛けるとしていたが、終わってみると約388億円。この分を足し戻してみれば、同期の“最終利益”は約1445億円となり、下方修正前とほぼ同じになる。中国経済の急減速という危機を捉え、むしろ体質を強化するために、需要の落ちたハードディスク向けモーターを生産するフィリピンの工場の転用や設備の償却などに一挙に取り組んだのだろう。受注減などによる真の業績悪化だけで、ここまで落ちたわけではない。

 というのも、永守会長は過去にも同様の取り組みをしてきているからだ。例えば2013年3月期。前期がタイの大洪水で減益になったが、この期には市場自体に大きな変化が起きた。スマートフォンの急速な普及などでパソコン需要が世界で急減速したのだ。日本電産の柱だったハードディスク用精密モーター市場は縮小し、同社は最終利益で前期80.4%の大幅減益となった。この時実施したのも工場・生産設備、製品在庫の大幅減損といったリストラだった。さらに車載や家電・商業・産業用など新たなモーター分野への事業構造の転換を思い切って加速した。これで業績は翌2014年3月期にはV字回復し、以後増益を続けてきた。

 危機のたびに思い切った改革を実施しようとするのは永守会長の得意技なのである。減益決算の裏にはそんなしたたかな永守流がある。

■変更履歴
掲載当初、写真説明で「17年3月期業績見通し発表」としていましたが、「19年3月期業績見通し発表」の誤りでした。本文は修正済みです。 [2019/04/24 18:20]

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