揺れる産業界

 欧州連合(EU)は環境をテコに域内企業を保護する思惑もある。脱炭素への取り組みが不十分な国からの輸入に、2023年1月までに追加関税を導入するよう検討している。

 22日にはフォンデアライエン欧州委員長が「炭素には価格が必要」と強調した。フランスのマクロン大統領は域内の取引で環境影響を評価するだけでなく「貿易でも重要」と踏み込んだ。

気候変動に関するオンライン首脳会合で、画面(右)に映る菅首相。左端はバイデン米大統領(写真:共同通信)
気候変動に関するオンライン首脳会合で、画面(右)に映る菅首相。左端はバイデン米大統領(写真:共同通信)

 バイデン米大統領も19年に候補者だったときから、気候変動対策が不十分な国からの輸入に「炭素調整料金」または割り当てを課す構想を示してきた。米国は中国に対抗する手段として、脱炭素を名目に実現しかねない。

 新たな関税には、炭素が1トン当たりの価格を決める必要がある。自国内で高い脱炭素目標を設定すれば、国内の炭素価格は排出量取引で上昇し、輸入品への課税単価も引き上がる。EUは30年に90年比55%減との脱炭素目標を、米国は30年に05年比50~52%減の目標を立てた。

 日本は世界貿易機関(WTO)ルールとの整合性を問うが、関税を課されたら輸出の打撃になる。ニコンやソニーグループなど208社が日本政府に「50%削減を目指してほしい」と、気候変動イニシアティブ(JCI)の提言に賛同していた。富士フイルムホールディングスの川崎素子執行役員は「気候変動対応はグローバルビジネスの参加条件」と言う。

 ただ、産業界は一枚岩ではなく、経産省と環境省のあつれきの背景となってきた。日本製鉄の橋本英二社長は経産省の会議で再生可能エネルギーについて「現実的なものが必要」と慎重姿勢を示した。高炉は鉄鉱石の還元で二酸化炭素が出る。クリーンな水素還元の技術確立には巨額投資が必要という。

 小泉環境相は今回の目標が固まる前々から「重要なのは数値だけではない」と周囲に語っていた。現在の延長線での発想を転換しないと、むしろ世界で不利になる。今後は国内でカーボンプライシング(炭素の価格付け)の導入議論が本格化する。「妥当な価格」は欧米勢の課税に異議を唱える根拠となるだけに、その行方は産業界全体の今後に大きな影響を与えそうだ。

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