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サマンサタバサは20代の女性を主な顧客に商品を展開。国内外の有名モデルを起用し販促に取り組んできた。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 女性向けハンドバッグなどを企画・販売するサマンサタバサジャパンリミテッドが、専務取締役の藤田雅章氏が25日付で会長兼社長に昇格する人事を発表した。創業者で現会長兼社長の寺田和正氏は5月の株主総会までに退任する。

 社長交代の理由について寺田氏は、「これまでは会社のオーナーと経営トップを兼ねる自分の存在感が強い『寺田一強』の組織だったが、昨年度の取り組みを通じて社員が自立した組織ができたためだ」と説明した。同社は18年3月以降、商品企画やPRの人材を各ブランドがそれぞれ抱える「カンパニー事業部制」に移行してきた。これらの機能は従来、全社を横断する組織だった。アパレルブランドのグローバル展開に詳しい渡邊貴美氏をCOO(最高執行責任者)に迎えるともに、藤田氏を中心とする集団指導体制へとかじを切る。

 サマンサタバサは19年2月期に黒字転換を果たした。18年2月期の連結営業赤字16億円から、19年2月には6億円の黒字に転換した。同社はその理由として、①カンパニー事業部制に移行することで各ブランドにコスト意識が浸透した、②広告宣伝販促費を3分の2まで削減した、などを挙げる。しかし、売り上げの落ち込みは激しい。19年2月期の連結売上高は前年同期比約14%減の277億円。16年2月期の売上高434億円から、3年間で3分の2にまで減った。

 常務取締役の菅原隆司氏は「店舗数の減少が減収の原因」とする。しかし、同社の代名詞である、国内外のモデルや著名人を起用した販促策の限界も透けて見える。寺田氏は、同様の販促策を今後も続ける方針と説明したが、「著名人がサマンサタバサの商品を持ってテレビCMに出たとしても、彼らが日常生活でもそのブランドを愛用しているというリアリティーが伝わらなければ意味がない」と課題意識をにじませる。

「寺田社長の退任は業績悪化が原因」との見方については否定した。

 同社では同時に、寺田氏が保有していた同社の株式の半分を、紳士服専門店のコナカで社長CEO(最高経営責任者)を務める湖中謙介氏に譲渡。湖中氏は寺田氏と同率の株式を保有する筆頭株主となる。さらに、サマンサタバサの社外取締役に就任する予定だ。

 この人事について、その意図を尋ねたところ、菅原氏は「個人間の株式譲渡と社外取締役の人事は別の話。たまたま同じタイミングになった」と説明した。

 カリスマである寺田氏が一線を退いた後、新体制の経営陣には「セレブ頼み」のブランディングに留まらない新しい成長モデルの構築が課せられる。再販価格を維持できるブランドを求める目も一層厳しくなる。メルカリに代表されるCtoC(個人間取引)が広がり、所有する喜びだけではなく二次流通時の価値も考えてブランドバッグを購入する消費者が増えた。

 加えて、ワンマン体質の見直しは進んだようだが、湖中氏が社外取締役に就任する人事には、ガバナンスの不透明さも垣間見える。異例の人事から始まる新体制は機能するだろうか。

■変更履歴
掲載当初、「独立した立場で経営を監督することが期待される社外取締役の席に筆頭株主が就くという異例の人事」としていました。「この人事」と修正します。 [2019/04/24 17:00]

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