(写真=共同通信)
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 三菱UFJ銀行は、5月から2歳未満の子供がいる全行員を対象に、約1カ月間の育児休暇取得を実質的に義務化すると明らかにした。有給休暇も活用して長期の休暇取得を促し、仕事と育児を両立しやすい環境を整備する。3メガバンクでは初めての取り組みになる。男性の育休取得の必要性がうたわれて久しいが、厚生労働省の2017年度の調査では、男性の育休取得率は5.1%にとどまる。日本を代表する金融機関の取り組みが取得率向上への起爆剤となるか。

 同行はこれまで、短期(最大10日間)の育休取得を促してきた。それもあって取得率自体は8割を超えたが、平均取得日数が2日と少なかった。そこから「本音では長く休暇を取りたいけれど、周囲への影響を考慮して取らない社員が多いのではないか」と考えたという。取得日数の少なさをかんがみ、社員の空気を読んで実施に踏み切った形だ。

 現時点で対象となるのは約1200人。対象行員は子供が生まれる1カ月半前に、家庭の状況、仕事の分担など育児に関わる計画書を直属上司に提出する。部下の取得状況は上司の人事評価に反映させる。

 同行の広報担当者は「会社には多様な人材がいる。仕事に多くの時間をあてたい人もいれば、私生活と仕事を調和させるライフ・ワーク・バランス重視の人もいる。優秀な人材を確保するため、働き方の選択肢の幅を広げたいと考えた」と説明する。

 異業種では先行例がある。積水ハウスは2018年、男性社員に合計1カ月間以上の育休取得を義務化した。同社は「上司が育休を取って部下に仕事を任せるようになり、それが部下の成長につながったというような好意的な声が上がっている」(広報担当者)と手応えを感じている。

 もっとも、こうした制度の実効性には疑問の声もある。ある銀行関係者は「1週間程度なら休みたいが、1カ月近くとなると、さすがに仕事にうまく復帰できるか不安。言うは易し行うは難し。現場で本当に取れるのか?」と冷ややかだ。三菱UFJ銀としても長期育休取得は義務ではなく、あくまで行員の様々な生活パターンに合わせながら強く促していくという立場だ。

 育児にかかわる「制度」はあっても「運用」がうまくできていない会社は多いだろう。人口減少で、女性活躍など多様な人材の社会参画が求められている中、男性の積極的な育児参加は欠かせない。働く社員のための制度が形式的なものではなく、本当に機能しているか。今一度、見直す時期に来ている。

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