新型コロナウイルスによる経済活動の低迷で原油需要が急減し、原油価格の下落が止まらない。ついに、売り手が手数料を払って原油を引き取ってもらう「原油価格のマイナス」が発生した。原油在庫の貯蔵場所が不足しており、原油を積んだ大型タンカーが海上を漂流する事態となり始めている。

(写真:shutterstock)
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 原油価格の下落が止まらない。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)では原油価格の国際指標、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が4月20日、前日比で50ドル近く値下がりし、1バレルマイナス37.63ドルで取引を終えた。原油価格がマイナスとなるのは取引が始まって以来のことだ。

 世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大し、企業は生産設備の停止を余儀なくされている。モノや人の移動も制限されているため、航空機をはじめとする輸送エネルギー需要も急減している。こうした経済活動の低下が原油需要の急減につながり、価格の急低下を引き起こした。今年はじめ、1バレル65ドルあった原油価格は4カ月で50ドル以上値下がりした格好となる。

 1週間前には、サウジアラビアが中心となる石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの産油国が過去最大の日量970万バレルの協調減産で合意したばかりだった。970万バレルは、日量ベースで見た世界の原油供給量の約1割に相当する。だが減産しても、深刻な需要低下には「焼け石に水」だった。

 そもそも、原油価格がマイナスになるとはどういうことなのだろうか。通常、原油の買い手は売り手に対して代金を支払い、原油を手に入れる。しかし、価格がマイナスになると、売り手が買い手に対し手数料と原油を手渡すことで、相手に引き取ってもらうことになるのだ。つまり、原油の売り手がお金を払って原油を「買ってもらう」状態になるのである。

 通常ならば、このような売買はそもそもする必要はない。価格がマイナスとなった背景には、石油各社の深刻な在庫の積み上がりがある。例えば原油の現物受け渡しが行われる米国オクラホマ州クッシングでは、原油の貯蔵能力が限界に達しそうだという。南アフリカ共和国ではサルダンハ湾にある巨大な原油貯蔵ターミナルが満杯になった。似たような状況が世界中で起こっており、多くの石油元売りが原油や石油製品の保管場所に頭を悩ませている。結果、在庫をさばきたい一心で、投げ売りが始まっているのだ。

 また、「貯蔵場所を確保できれば、大もうけになる」と、大型石油タンカーをレンタルして原油を積み込み、海上を漂流させる投資家も現れ始めた。おかげで大型タンカーの船料が急騰しているという。

 このような状況はいつまで続くのだろうか。野村証券の大越龍文・シニアエコノミストは「世界の原油需要の回復が確実に見通せるようになるまでの間は、今後も断片的にマイナスの価格が続く可能性がある」と話す。

 4月15日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した石油需要見通しでは、4月は前年同期比で2900万バレル需要が減るとみている。平常時の3割程度の需要になる計算だ。5月以降、需要の減少幅は徐々に回復するも、12月時点でも需要の前年割れは解消されないとIEAはみている。

 原油安が長期化すれば、金融市場へのインパクトはもちろん、日本をはじめとする、エネルギー輸入依存度の高い国々の政策や財政にも影響が出てくるだろう。近代資本主義の繁栄を支えてきた石油燃料を巡る状況は、いまだかつて経験したことのないフェーズへと突入しようとしている。

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