インド政府は新型コロナウイルスの感染拡大により、全土で実施する都市封鎖(ロックダウン)を5月3日まで延長することを決めた。ロックダウンが産業に与える影響は大きく、3月のインドの新車販売台数は前年同月比の6割減まで落ち込んだ。政府は今年4月に新たな排出ガス基準の「バーラト・ステージ6(BS6)」への切り替えを予定していたが、BS6を満たしていない自動車の販売を一部認める方針だ。

 だが、すでにBS6を満たすものに切り替えていたスズキにとっては環境規制の「緩和」の追い風はない。コロナショック以前にも景気の悪化で自動車販売が伸び悩んでいたインド市場だけに、先行きは見えないままだ。

 インド政府は4月14日、新型コロナウイルスの感染拡大により全土で実施する都市封鎖(ロックダウン)を、当初予定の4月14日から5月3日まで延長すると発表した。

 インドでは当初、新型コロナウイルスの感染について楽観論が広がっていた。4月19日時点の国内での感染者数は約1万6000人で、死者数は約500人。欧州と比べ死者の割合が少ないとされているものの、インドの現地紙Mintは「検査を受けられない人が多く、感染者数はもっと多いのではないか」と指摘する。

 さらなる感染拡大を防ぐためロックダウンが延長されたが、産業に与える影響は深刻だ。

マルチ・スズキがハリヤナ州に持つ主力工場。写真は19年8月のもの。(写真:ロイター/アフロ)
マルチ・スズキがハリヤナ州に持つ主力工場。写真は19年8月のもの。(写真:ロイター/アフロ)

 インドは販売台数で世界4位の自動車大国だ。ただインド自動車工業会(SIAM)によると、3月の新車販売台数は約15万6000台と前年同月比6割減まで落ち込んでいる。ロックダウンにより自動車販売店は全て営業をストップし、スズキ子会社でシェア5割を握るマルチ・スズキも全ての工場の操業を停止している。

 自動車販売が落ち込む中、SIAMと自動車販売店協会連合(FADA)はロックダウンに際し、ある要望を最高裁判所に提出している。それが、新たな排ガス基準を満たさない自動車の販売の容認だ。

 インド政府は前回の排ガス基準の「バーラト・ステージ4(BS4)」から、20年4月に基準を厳しくした新たな環境規制「バーラト・ステージ6(BS6)」に切り替える予定だった。ただ、ロックダウンにより3月末までにBS4ベースの車の在庫処分ができなかったディーラーが相次いでいた。SIAMなどの要望を受け、最高裁判所はロックダウンを終えた後10日以内、つまり5月14日までであればBS4の在庫のうち10%を販売してもよいと認めた。

 BS4の乗用車の在庫は全国で約1万5000台、二輪車は70万台もの在庫を抱えると試算されている。SIAMとFADAはさらなる販売期間の延長を求める方針だ。

 だが、すでにBS6に切り替えていたスズキをはじめとした各メーカーにとっては「緩和」の追い風はない。重要なのはその後だ。インドの自動車産業に詳しい日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の古屋礼子氏によると、「ロックダウンの延長により、従業員への賃金支払い、資金繰りの悪化といった課題が挙がっている。政府からの支援などはなく企業は苦慮している」という。

 インド政府は貧困層への現金給付や農民層に向けた支援策を急いでいるが、企業や産業向けの補償策は明らかにされていない。スズキ本体も、インド市場の先行きが読めないことから決算発表の延期を決めた。

 1983年に現地生産を開始したマルチ・スズキの抱える従業員数は1万5900人(19年4月時点)にのぼる。インドでは自動車会社の多くは請負労働者の雇用を増やすことで対応してきたが、労働条件の格差などから数多くの労働争議も起こってきた。マルチ・スズキでも2000年にはストライキが起き、12年には同社の工場で大規模な暴動が勃発している。今回もロックダウンが長引けば、労働者の問題が新たな火種となる可能性がある。

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