
ヤマハ発動機は4月19日に東京都内で開いたイベントで、ゴルフ場や遊園地などで使われる「ランドカー」と呼ばれる小型車を活用し、地方の活性化につなげるプロジェクトを本格展開する方針を発表した。同社は2018年10月から、地域創生をモビリティーの視点から考える「まちノリ☆ラボ」と呼ばれるプラットフォームを共催している。19日のイベントに登壇した日髙祥博社長は「低コストなラストワンマイルの移動ソリューションを目指す」と述べた。
人口減少が進みバスなどの公共交通機関の維持が難しくなっている地方では、移動課題の解決策として自動運転への期待が高まっている。政府は20年までに過疎地で無人の自動運転バスの運行開始を目指す方針で、全国各地でも自動運転バスの実証実験が次々と進められている。3月21日には、大津市と日本ユニシス、京阪バスが共同で、大津市の中心部でレベル3(条件付き自動運転)の自動運転バスでの実証実験を行った。ソフトバンクグループのSBドライブも3月23日から鳥取県八頭町で同じくレベル3の自動運転バスで実証実験を行っている。
しかし、現実的な問題として地方公共団体にとって大きなハードルとなるのが導入コストだ。大型の自動運転バスの導入費用は1台数千万円とも言われ、さらに運用コストもかかってくる。過疎が進み財源に乏しい自治体にとっては手が出にくい。そこで現実的な解決策としてヤマハ発動機が提案するのが、ゴルフカートのような小型車だ。ヤマハ発動機はこれまで生産していた車両をベースとする低コストな電動小型低速車の開発を進める。
地方地域などに向けて販売されている現行のモデルは、公道走行が可能な規格に調整し、ナンバーをつければすぐに使用可能だ。1台100万~200万円の小型車をベースに開発するため手ごろな価格となる上、貨客混載可能で人だけでなくモノの移動にも対応する。自動車メーカーから鉄道会社まで幅広い企業が移動手段をサービスで提供する「MaaS(マース)」事業に参入するなか、低コストでも地方で導入しやすい「身の丈」とも呼べる事業モデルで存在感を高めたい考えだ。
都市部での走行を目指す自動運転バスと比べ、ランドカーは通信データやシステムなどの技術的なハードルは低く、低コストでの生産や運用が可能になるとの考え。「自動運転とそうではない移動手段の両方を用意して、地域の課題に合わせて選んでもらいたい」(同社広報)とする。昨年9月には米半導体メーカーのエヌビディアとの協業も発表するなど自動運転化へ着々と布石を打っており、将来的には同じような地域課題を抱える海外への輸出も視野に入れる。
掲載当初、「1台100万~200万円と手ごろな価格帯な上」としていましたが、「1台100万~200万円の小型車をベースに開発するため手ごろな価格となる上」の誤りでした。本文は修正済みです。 [2019/04/25 15:40]
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