
米アップルは4月15日(米国時間)、廉価版のスマートフォン「iPhone SE」を発表した。価格は399ドルから。旗艦モデルに比べて価格を抑えることで、既存ユーザーの買い替えを促す狙いがある。17日に予約を開始し、24日に発売する。
2016年に投入した廉価版「SE」の後継モデルとなる。インターネット上などでは、「SE2」や空き番となっている「9」というモデル名も噂されていたが、最終的には前モデルの名称を受け継いだ。
仕様面では17年発売の「8」と共通する部分が多い。4.7インチの画面サイズと本体サイズは「8」と同じ(関連記事:新型iPhoneに液晶供給も、「日の丸」2社が陥る消耗戦)。メインカメラとして1200万画素品を1個搭載するのも一緒だ。変更点は頭脳となるCPU(中央演算処理装置)で、現行の旗艦モデルの「11」と同じチップを搭載して処理性能を高めた。
一連の仕様は事前報道で伝えられていた通り。ここ数年、iPhoneの新モデルは事前に仕様が漏れることが多い。今回の新型SEもアップル製品のファンにとっては驚きが乏しかったかもしれない。
想定より1カ月遅れ
部品メーカーを含めた関係者が注目していたのは発売時期だった。もともと新型SEは3月中旬の発表が見込まれており、部品メーカーの多くはその想定で供給を進めてきた。アップル自身は公言していないが、発表が1カ月遅れたことになる。
原因とみられるのは新型コロナウイルスの感染拡大によるスマホ市場の急激な落ち込みだ。米調査会社ストラテジー・アナリティクスは、2月のスマホの世界出荷台数が前年同月比38%減になったと発表。新型コロナの影響で3月以降も販売台数は伸び悩んでいる模様だ。
こうした市場の急ブレーキを受けて発表時期が遅れた新型SEについて、国内部品メーカー幹部は不安を口にする。「SEは年内に最大で3000万台の出荷を想定していたが、伸び悩むかもしれない」
そのアップルをさらに悩ませるのが、秋以降に発表予定の旗艦モデルだ。アップルは今年のiPhoneの旗艦モデルで、同社として初めて次世代通信規格「5G」に対応させる予定。複数の関係者によると、異なる画面サイズや、高速・大容量通信を実現する「ミリ波」の有無などで数モデルの開発が進んでいるという。ところが新型コロナの影響で、例年通りの9月発表から「遅れる可能性が出てきた」(部品大手幹部)ようだ。
iPhoneの旗艦モデルは販売台数が年間1億台を超えるアップルの屋台骨だけにつまずきは許されない。同社が投入時期の見極めに慎重になるのは仕方がないところだろう。ストラテジー・アナリティクスは4月、20年の世界でのスマホ出荷台数が前年比2割減になる見通しを明らかにしており、市場は厳しさを増している。
秋以降の「5G版iPhone」は、5G普及の起爆剤として業界からの期待も大きい。アップルへの依存度が高い通信事業者や部品メーカーだけでなく、スマートフォンの「エコシステム(生態系)」全体が固唾をのんでアップルの判断を見守っている。
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