システムはほぼ完成していた
問 システムは自社で開発していたのか。
神田:2018年3月に会社を設立した際、最も時間を要するのはシステム開発だとみていた。まずは開発に着手し、システムが完成するころに仮想通貨交換業の登録を終えているという絵図を当時描いていた。他社のシステムの利用も検討してみたが、自由度や品質を鑑みて、自前での開発を選んだ。
システムはかなり完成に近づいていたといっていい。2019年1月からは一部社員にアプリをインストールしてもらい、テストをしていた。この2カ月間は報告のあったバグの改善を進めてきた。
問 システム完成も間近。仮想通貨交換業の登録も間近だったのではないか。
神田:登録について、当事者では分からない。だが、金融庁とやり取りしているなかで手応えは感じてきていた。体制の整備、システム開発もある程度めどが立っていたことを考えると、登録までにあと1年も要するという感触ではなかった。
だが、仮にあと2~3カ月で登録を完了できて参入できたとしても、はたしてそれでよかったのかという思いがある。その後のビジネスが本当に順調に進むのか、見通しが立たなかったためだ。仮にサービスを開始してから取りやめるとなれば、社員はもちろんのこと、顧客に多大な迷惑をかけることになる。
今回の判断を決して早いとは思わない。だが、これ以上進む前にこの決断を下したマネーフォワードの取締役会は、適切なマネジメントが機能していると考えている。
問 神田氏自身、マネーフォワードに入社してから一貫して仮想通貨事業に取り組んできた。仮想通貨交換業登録を取り下げた今後、どうするのか。
神田:振り返れば、あっという間の1年半だった。密度が濃く、変化が早く、嵐のような1年半だった。そもそも入社して半年で社長に就任するなど想定もしていなかった。
今後は、マネーフォワードフィナンシャルが取引していた事業者の対応を最優先で進める。その後、考えているのは「地方」だ。私自身、青森県という地方出身者だ。フィンテックが地方や地域のコミュニティーにどのように貢献できるのか、金融庁時代から常に問題意識を持っていた。
地銀や自治体と組み、どのようなサービスを作っていけるのか。電子地域通貨は個人的にすごくやりたい分野だし、マネーフォワードの既存の事業ともシナジーがあると考えている。こうした可能性を少し時間をかけて探ってみたいと考えている。
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