スルガ銀行の新経営体制を巡るスルガ銀とノジマの対立はいったん落ち着いたようだ。

 シェアハウスを巡る不祥事からの経営再建を進めるスルガ銀は2020年4月10日、有国三知男社長が会長に退き、後任に嵯峨行介副社長が就任するトップ人事を発表した。副会長には、株式の18.5%を所有する筆頭株主で家電量販大手のノジマの野島廣司社長を迎える。スルガ銀が「副会長」ポストを設置するのは初めてで、異例の待遇となる。

筆頭株主であるノジマの社長を「副会長」ポストに迎え、経営再建を急ぐが・・・(写真:ロイター/アフロ)
筆頭株主であるノジマの社長を「副会長」ポストに迎え、経営再建を急ぐが・・・(写真:ロイター/アフロ)

 新体制を巡っては、野島氏が嵯峨氏以外の人物を新社長にするよう提案するなど、嵯峨氏を社長にしたいスルガ銀側とノジマ側で意見の対立が表面化。さらにノジマ側は野島氏を含む3人の取締役の就任を求めるなど、積極的に経営に関与していく姿勢をあらわにした。スルガ銀側がこの提案を受け入れられない場合、株主提案も辞さない姿勢を示していた。

野島氏側の社外取ポスト要求を受け入れ

 対するスルガ銀側は、トップ人事に関しては最終的にノジマ側の提案を拒否。その一方で、ノジマ側が求めた3人の社外出身者に取締役のポストを用意した。関係者によると、野島氏は自らと、住友銀行(現三井住友銀行)出身の峯村悠吾氏、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)出身の佐竹康峰氏について、取締役就任を求めていた。スルガ銀は結局、この要求については全面的に受け入れたというわけだ。スルガ銀としても、人事を巡る混乱の長期化を避け、経営再建を一気に進めたいとの考えから、双方が折り合ったとみられる。

 だが、このスルガ銀側の譲歩が、迅速な経営再建につながるかは不透明な面もある。

 今回の経営陣の陣容を見ると、取締役は7人から13人に膨れ上がる。「外部の知見をより多く取り入れ、経営体制を強化するため」(スルガ銀広報)とのことだが、このうち生え抜きは3人という異例の少なさだ。嵯峨氏は佐川急便の親会社であるSGホールディングス出身で、社長から会長になるプロパーの有国氏を支え、経営計画の立案を担当してきた。このためスムーズにバトンタッチができそうだが、スルガ銀に来て1年に満たない嵯峨氏の経営手腕は未知数だ。

 そもそも今回の対立の発端は、スルガ銀が3月下旬、シェアハウス所有者が物件を手放せば、オーナーの借金を帳消しにすると発表したのがきっかけだ。棒引きにする借金はオーナー約250人分の計約440億円分に上る。このスルガ銀の対応について、株主として疑問を投げかけたのが野島氏とされる。「借金帳消しによってシェアハウス問題に区切りを付けたいスルガ側と、残債放棄で企業価値を毀損することを問題視したノジマ側の双方の主張は共に筋が通っている」(金融庁幹部)ことから、この問題が長期化するのではないかとの見方も広がった。最終的に双方が歩み寄った形だが、問題の根本的解決になっておらず、対立の火種はくすぶったままだ。

 さらに気になるのは副会長に座る野島氏の意向だ。もともと野島氏はスルガ銀とクレジットカードの共同事業化など、全面的な協業を求めており、出資比率の引き上げもほのめかしていた。「業態が違い過ぎる」(スルガ銀関係者)として従来の銀行ビジネスの枠組みを超えたフィンテックの新領域に限定して協業したいスルガ銀側との溝は埋まっていない。