(写真:共同通信)
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 シェアハウスを巡る不正融資が横行していたスルガ銀行(静岡県沼津市)。12日、金融庁から受けた6カ月間の一部業務停止命令が解け、翌日から新規の不動産向け融資が再開できるようになった。だが信頼回復にはなお時間がかかり、単独での事業継続は困難が見込まれることから、「もはや解体して事業を切り売りするしかない」(金融関係者)と身売りが噂されているが、創業家との関わりが残るという大きな問題を抱えたままでは交渉は難航しそうだ。

 スルガ銀は、主な業務を個人融資に特化し、ほかの銀行が真似できないビジネスモデルを築き上げて好業績をあげていた。不正の温床となったシェアハウスなどの不動産向け融資は全体の融資の3分の2近くを占める稼ぎ頭だった。しかし、昨年ごろからシェアハウスを巡る不正融資の疑いが表面化、金融庁が昨年4月、立ち入り検査に踏み切った。

 検査結果を踏まえ、金融庁は10月、スルガ銀の行員が、不動産業者が入居率を実際よりも高く設定していたことを知りながら、融資していたなどの多くの不正行為があったと認定。組織全体の経営管理体制が不十分だったとして、4月12日まで6カ月間の一部業務停止命令を出していた。

 預金を扱い、高い信頼が求められる銀行が、不動産業者と結託する形で不正に手を染めていたことへの預金者の不信感は簡単には消えない。行員自ら融資書類を改ざんするという悪質なケースも明らかになった。

 スルガ銀は水面下で売却先を探している模様だ。売却先には金融業参入を狙う家電量販店や、スルガが持つ優良顧客を獲得したい金融機関の名前が挙がっているが、交渉はまだ固まっていない。

 交渉を考える上で、スルガ銀には忘れてはいけない大きな問題がある。創業家が大株主となっている点だ。昨年9月末時点では、創業家の関係会社や団体が15%ほどの株式を保有していた。一族が実質、スルガ銀に対して大きな力を持っていたとされる。

 スルガ銀からの融資姿勢でもその一端がうかがえる。金融庁は、検査の結果、「創業家関連企業に対する融資について、具体的な返済計画の検証を行っておらず、不適切な融資管理が認められる」と指摘した。

 スルガ銀によると、創業家関連会社への融資額は488億円にのぼり、うち69億円が創業者個人に流れたという。取締役会の議論をせず、融資を実行していた例もあり、金融庁は「ガバナンス(企業統治)上の問題がある」と断じた。

 スルガ銀は昨年11月末に公表した業務改善計画で「創業家一族企業に株式売却と融資の全額回収を進め、創業家との資本関係を解消する」としているが、今のところ目立った動きはない。12日の一部業務停止命令の解除を受けた適時開示でも、スルガ銀は「解消に向けて取り組む」との説明にとどまった。

 「創業家との関係が解消されないと、スルガのイメージは悪いまま。売却交渉はすんなり進まないだろう」。帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長はこう見通す。ゼロから経営を立て直すには、創業家とのかかわりを整理することから始めなければならない。

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