日立製作所は4月11日、東京都国分寺市にある中央研究所内にオープンイノベーション推進施設「協創の森」をオープンした。社内の研究者やデザイナーが、政府、自治体、企業、大学などの担当者と意見交換して新規事業の開発を目指す。協創の森は、新設した「協創棟」を中心に、300人規模の国際会議場やプロトタイプ製品の開発ができる研究設備を備える。同社執行役常務CTO兼研究開発グループ長兼コーポレートベンチャリング室長の鈴木教洋氏は「ハッカソンを開催するなど、外部のアイデアを積極的に取り入れていく」と話す。

中央研究所内に新設された協創棟
中央研究所内に新設された協創棟

 武蔵野の森の中に1942年に設立された中央研究所は、日立の技術開発で長く先導役をつとめてきた。情報、エレクトロニクス、ライフサイエンスを中心に基礎的な研究を手掛け、初の国産大型計算機や世界初の固体撮像素子を生み出すなど、日立の技術力の象徴的な存在だ。現在も約900人の研究者を抱え、指静脈認証技術などでリードする。

 そんなアカデミックな印象が強い中央研究所が、いわば「部外者」を積極的に招き入れる施設を整えた。日立の技術資源を外部にも公開し、イノベーションを生み出そうというわけだ。鈴木氏は「従来は自社製品の開発だけでもビジネスとして成立していたが、製品がコモディティー化する中では、顧客の抱える問題を解決するところまで踏み込まないと難しくなった」と、その背景を説明する。

 実は日立は15年に東京・赤坂に新規事業を顧客と共同で検討する拠点を構えている。ただ、実際に新規事業を立ち上げるには、新しい技術に裏打ちされた議論も必要になる。日立は国分寺の中央研究所を“開放”することで、事業化のスピードを上げる効果を見込む。

日立製作所執行役常務CTO兼研究開発グループ長の鈴木教洋氏は「協創の森ではプロトタイプをすぐに作り、それを見ながら打ち合わせができる」と話す。
日立製作所執行役常務CTO兼研究開発グループ長の鈴木教洋氏は「協創の森ではプロトタイプをすぐに作り、それを見ながら打ち合わせができる」と話す。

 すでに国分寺市の人の流動性に関するプロジェクトや、AI(人工知能)を活用した政策提言など複数の事業が検討されているという。鈴木氏は「社会課題を解決するために産学官を含めた連携は必須になっている。高度な社会インフラを提供するグローバルリーダーとなり、中央研究所の新たな歴史を作っていきたい」と意気込む。

 バブル崩壊後の1990年代後半以降、産業界では基礎研究は大学に任せ、自社では商品化に近い開発に注力する動きが広がった。そうした中でも生き残ってきた日立の中央研究所。オープンイノベーションの波が押し寄せる中、いよいよその役割を大きく変える日が来たのかもしれない。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。