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新型コロナウイルスを巡る緊急事態宣言で、JR東日本の利用者数が大幅に落ち込んでいる。在宅勤務や出張自粛は当面続くと見込まれ、運行効率化の取り組みが急務だ。

 東京都心のJR新宿駅。午前9時、山手線に乗り込むと、休日の早朝や深夜のように人が少ない光景に出くわす。新型コロナウイルスの影響が広がっていることは、利用者が少ないことと、他人との距離でわかる。7人掛けのシートは空席だらけなのに、あえて人を避けるように立つ人がいる。乗り込む人が少し増えると、車内に余裕があるのに1本見送る人もいた。

緊急事態宣言が出たことで、外出する人は一層減っている。経営への影響は計り知れない(写真:PIXTA)

 いつもと比べればガラガラに見えるこの状況は、コロナ対策の理想にどれくらい近いのだろう。山手線を運行するJR東日本によると、緊急事態宣言が出る前の4月上旬、平日朝の通勤時間帯は、同線の利用者が2月上旬と比べ35%減った。一方、他人との1~2メートルの距離を保つと電車に乗れる人数は82~64%減るという試算がある。単純な比較はできない面もあるが、この数字をみる限り「理想に比べればまだ混雑」といえるのかもしれない。緊急事態宣言が出たことで、通勤や通学で電車を利用する人は一層減っている。

 いまの時点で経営への影響がより大きいのは、出張や旅行の取りやめに伴う新幹線の需要縮小だ。通勤や通学は定期券を買うため一定の収入が見込める。

 新幹線は経営の屋台骨になっている。JR東の2019年3月期の営業利益(単体)は3918億円あり、このうち新幹線による割合が57%にのぼる。JPモルガン証券の姫野良太アナリストは「JR東海はさらに割合が大きく、各社にとって影響は甚大」と指摘する。JR東の3月30日~4月3日の利用者数は前年比62%減で、週末の4月4~5日になると83%減におよんだ。利用者がそこまで減らなかった2~3月でも、減収額は前年同期比730億円にのぼっており、今後さらに打撃が広がる。

 JR各社は鉄道以外の事業として駅ビル、駅ナカの商業施設やホテルに力を入れてきた。これらも新型コロナの影響で休業などに追い込まれており、収益の下支えにはならない。

 各社にとって頭が痛いのは、新型コロナの感染が早く収束しても需要が同じように元に戻るとは考えにくいことだ。オンライン会議の浸透、業績悪化による経費削減によって、企業は出張を抑える。姫野氏は「08年のリーマン・ショックでは、東海道新幹線の場合、輸送量が回復するまで4年かかった。今回は働き方などの構造変化があり、影響の大きさはそれ以上だろう」とみる。オンライン会議の浸透は山手線のような、新幹線でない路線にも大きく響く。

 JR東は18年に策定したグループ経営ビジョンで、人口減少という流れに加えて「働き方改革などで移動のニーズが縮小すると、急激に利益が圧迫される」と危機感を示した。このリスクが予期せぬ形で現実のものとなった。研究開発を進めている自動運転をはじめ新たな技術で運行を効率化するなど、事業変革の加速が課題になっている。

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