ガバナンス問題で揺れるLIXILグループが4月9日、瀬戸欣哉氏をCEO(最高経営責任者)から解任した経緯に関する調査・検証結果の報告書の全文を開示した。調査を依頼した西村あさひ法律事務所が作成した報告書で、機密情報に触れている部分は「(略)」と伏せられている。

LIXILは2月25日に、経営戦略上の機密事項や個人情報に触れている部分があるという理由で、報告書を要約して公開していた。だが、「会社側が恣意的に情報を取捨選択して要約したのではないか」として、全文公開を求める声が投資家から上がっていた。
関係者によると、今回、LIXILが全文公開に踏み切ったのは、東京証券取引所から報告書の全文開示の要求があったため。さらに機関投資家などからも全文開示を求める動きがあった。
LIXILは4月9日午前に急きょ、臨時取締役会を開催し、全会一致で開示を決定した。
「退任の本当の理由」について潮田氏と指名委員の認識にズレ
既に公開されていた報告書の要約からも、瀬戸氏の退任と自身のCEO就任を望んだ潮田洋一郎会長兼CEO(当時は取締役会議長兼会長)の誤解を与える言動がガバナンスの観点から不適切であったことが明らかになっている。
今回、開示された調査報告書の全文では、潮田氏と瀬戸氏が対立した原因などについては、依然として伏せられたままだが、瀬戸氏自身が辞意をもらしていたことが各所で指摘されている。これについて瀬戸氏は、4月5日の日経ビジネスとのインタビューで、「辞意を示しているので辞めるのはおかしくない、という意図を持って作成されている」と反論している。
また、要約版で伏せられていたが今回、開示された内容からは、瀬戸氏解任の理由について、潮田氏と他の指名委員で認識が共有されていなかったことも浮き彫りになった。
潮田氏は調査を担当した西村あさひの弁護士に、「瀬戸氏がCEOを退任することになった本当の理由は、LIXILグループの業績悪化である」「指名委員会においても瀬戸氏のCEO退任理由は、業績悪化であることが共有されていたと思う」と語っている。
一方、調査報告書は、「過去に開催された指名委員会の議事録等において、LIXIL グループの業績悪化を理由として、瀬戸氏に辞任や解任を求めるなどの議論がなされた形跡は見られない。加えて、当職らによるヒアリングの結果、指名委員の中に、瀬戸氏のCEO 退任理由は業績悪化であると認識している者はいなかった」と指摘している。
開示された調査報告書の全文を読んだ機関投資家の1人は、「業績を巡る潮田氏と指名委員の認識の食い違いや、瀬戸氏の解任を決めた昨年10月31日の取締役の生々しいやりとりが、要約版では削られていたことが分かった。比較すると、不信感がさらに増す」と語る。
高まる投資家からの圧力によって、全文開示に踏み切ったLIXILだが、かえって投資家の不満を募らす結果になったようだ。
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