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 4月6日、東京・恵比寿にあるスペインバル「バル・ペピート」が、テークアウトを主体とする「デリカテッセン」を始めた。タパス(小皿料理)やボカティージョ(スペイン風サンドイッチ)、パエリアなどのスペイン料理を作り、来店客に家やオフィスにテークアウトで持ち帰ってもらうという。

東京・恵比寿のスペインバル「バル・ペピート」店主の太田聡氏
スペイン料理のテークアウトが可能に

 ペピートでは小池百合子都知事の外出自粛要請後は土日営業を諦め、平日も売り上げが3割ほど減ったという。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で街中に出る人が減少する中、売上高が落ち込んでいない飲食店はほとんどないだろう。

 自治体トップらから外出自粛を呼びかけられる異例の事態だが、補償策は現時点では決まっていない。飲食店は売上高が減少すれば家賃や人件費といった固定費がそのままのしかかるビジネスだ。バーやレストランなどは資本力がない個人経営の店舗も多く、文字通り死活問題に直面している。

 政府は新型コロナウイルスの流行に伴い、雇用調整助成金の支給要件を緩和している。中小企業向けでは日額8330円の範囲内で休業手当の最大9割の支給が受けられる。ある程度の規模で従業員を抱える飲食店は、休業など、経営判断が可能になった。

 だが、店主と数人のアルバイトで回すような個人経営の飲食店にとっては、使い勝手が悪いことは否めない。こうした店にとっては人件費よりも家賃や光熱費などの占める割合が大きい。加えて、雇用調整助成金を申請して認められても振り込みは2カ月後などとタイムラグが大きく、その間の資金繰りという意味では役に立たない。

 実質無利子となる融資制度も用意されている。だが、継続的に経営が成り立つか分からない中で、借金を増やすことには抵抗があるという経営者は多い。延命しても新型コロナウイルスの流行が収まらなければ経営が再び軌道に乗るかは分からない。その中で、借金を増やすのには勇気がいる。多くの事業者が経営をなんとか成り立たせようと努力しているが、「いつ破綻するか」を現実的な選択肢として視野に入れておくことは必要だ。

 現在、多くの飲食店がテークアウトやデリバリーなどに活路を見いだそうとしている。立地条件などにもよるが、多くの料理メニューなどはそのまま使える部分もあり、容器や食器を用意すれば比較的容易に始められる。ただし、店内飲食で大きな収入源となるアルコール飲料の売り上げが見込みづらいなど、ビジネスモデルとしては異なる部分が大きい。

 また、取り扱う品目によっては通常の「飲食店営業」とは異なる営業許可が求められる。調理したての料理を出せる店内飲食に比べると食中毒のリスクも上がるため、衛生面に気を配って容器に詰めたり、保管方法や消費期限などを顧客に説明したりする必要も出てくる。

 それでもペピート店主の太田聡氏は「昔から地元に密着したデリカテッセンをやってみたかった。夢をかなえるいい機会」と前向きだ。新型コロナウイルスの流行という想定外の事態においても、自らの力で生き残ろうと創意工夫する飲食店は多い。