(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 「どこの店舗がつぶれるかとか、リストラはあるのかとか、もう社内がざわついているものですから。詳細な内容はまだ詰めていないと、広報やIR担当者は大反対しましたが、早くトップからメッセージを出した方がいいと考えました」

 4月4日に開かれた投資家向け説明会の記者会見終了後、野村ホールディングス(HD)の永井浩二CEO(最高経営責任者)は本誌に対し、構造改革の内容をいち早く発表した背景を説明した。

 1月に発表した野村HDの2018年3月期第3四半期決算は、最終赤字が約1000億円。4月末に発表予定の本決算では、10年ぶりの赤字転落が見込まれている。通常ならば同社は毎年5月に投資家向け説明会を実施しているが、今年は構造改革の方針を伝えるべく異例の前倒し開催となった。経営陣の危機意識が感じられる。

 今回の構造改革を一言で表現するならば「組織のシンプル化」と言ってよいだろう。08年に米リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を買収して以降、世界に伍する投資銀行を目指すべく、野村は拡大路線を走ってきた。米国、欧州、アジアと各地域に拠点を作り、ビジネスを裏で支えるシステムや人事、経理などのバックオフィス業務も拡充してきた。

 ホールセール部門では、世界的に続く低金利を背景に、債券トレード中心に収益が上がらなくなった海外ビジネスの見直し・縮小をこれまでも何度か実施してきた。しかしバックオフィス業務には手をつけてこなかった。

 今後はこうした管理部門にもメスを入れる。「今まで(地域と事業が縦横で交わる)マトリックス経営をやってきたが、時代は変わった。地域という概念は捨てる」(永井CEO)。各拠点に点在していたバックオフィス業務は集約する方向だ。中期的にホールセール部門のコストを2018年3月期と比べて10億ドル(1100億円)減らすという。

「富裕層に手厚く人員配置」

 国内営業部門でも組織や業務フローを再構築して「シンプル化」する。具体的には国内約150カ所にある支店の約2割、30店舗以上をなくす。路面や駅前一等地にこだわった支店の立地についても見直すという。

 大人数の営業員を使って対面の顧客接点を増やし、なるべく多くの商品を販売したり、注文を受けたりするのが野村の営業スタイルだったが、こうした一律の「モーレツ営業」のやり方が変わると言ってもよいだろう。

 今後は事業所などの法人、富裕層に付ける営業員を手厚くし、それ以外のマス層や対面営業を好まない顧客については来店対応や電話セールスで対応する体制に変更する。これまであまり力を入れてこなかった、オンラインサービスで顧客を増やすことも視野に入れる。「非対面でもナンバーワンを目指していきたい」(永井CEO)営業員の人員削減はせず、国内約6900人いる営業員のうち、3300人を配置転換して対応するという。

 しかし、野村の事情をよく知る関係者は「それなりに大規模な配置転換になると思うので、対応できない社員は必ず出てくるはず。営業員の自然減少を相当数見込んでいるのではないか」と推測する。

 ホールセール、国内営業ともに組織をスリム化し、収益性の高い事業に経営資源を集中させることで「稼ぐ力」を取り戻す方向なのだろうが、コスト削減の色合いが強い構造改革内容なのは否めないだろう。

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