
東京地検特捜部は4日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏を会社法違反(特別背任)の疑いが強まったとして逮捕した。ゴーン氏の逮捕は2018年11月以来4度目。保釈中の逮捕は異例だ。今後の進展次第では、身柄を拘束して自白の引き出しを狙う日本の捜査手法への批判が再燃しそうだ。
今回の逮捕容疑は、オマーン財閥系の販売代理店を通した資金の不正流用。2015年から18年の間に日産子会社から代理店に販売促進費などとして送金した1500万ドルのうち、約500万ドルを実質的にゴーン氏が保有する預金口座に還流させた疑いとみられる。
ゴーン氏のはじめの2度の逮捕・起訴は有価証券報告書に報酬を過少に記載した金融商品取引法違反の疑い。3度目の逮捕・起訴はサウジアラビアの知人側へ日産子会社から約12億8000万円を不正支出させるなど特別背任の容疑だった。この間「証拠隠滅の恐れがある」などとして計108日、勾留された。
オマーンは日産にとって年約3万台を販売する中東での重要市場で、代理店経営者はゴーン氏の知人という。「日産から持ち込んだ話ではなく、検察の捜査の過程で浮かび上がったもの」(関係者)。不正流用によって日産は5億円強の損害を受けたとみられる。
3月には「住居にカメラを付ける」など弁護人の弘中惇一郎弁護士らが出した条件を裁判所がのんで保釈が実現したが、特捜部は起訴後も、別罪での捜査を継続していたようだ。オマーンの件に関しては、当初から「再び逮捕に踏み切ってもおかしくない」(元特捜検事の弁護士)との声が上がっていた。
ただ日本弁護士連合会元副会長の山口健一弁護士は「保釈後に関連事件で逮捕するのは異例。打ち合わせができないので公判にも影響が出る」と話す。今後の焦点は、ゴーン氏がいつまで勾留されるかだ。特捜事件では、逮捕後72時間は徹底した取り調べを行い、裁判所に勾留期間の延長を求めるのが一般的。裁判所が認めれば最大20日間の勾留延長が可能となり、捜査側はその間「調べ放題」の状況が続く。
被疑者の長期間の拘束が認められている国は少ない。自白を金科玉条とする捜査手法が背景にあり、海外からは「人質司法だ」と批判が集まっている。一度、証拠隠滅を防ぐ手立てを認めた裁判所は難しい判断を迫られることになる。
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