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 東南アジアのイスラム教国で、同性愛を「違法」とし、厳罰を科す動きが相次いでいる。

 ブルネイでは同性愛行為や不倫に対し、投石による死刑をもって臨むという衝撃的な刑法が今日から施行された。マレーシアでは2018年9月、同性愛行為を認めた女性2人に対してむち打ち刑が執行されている。報道によれば同国で女性がむち打ち刑に処されたのは初めてだという。さらにインドネシアのアチェ州でも、2018年、男性2人に対して公開むち打ち刑が執行された。通信社の報道によれば、保守的な州で同性愛者の逮捕が相次いでおり、性的少数者(LGBT)に対する圧力が強まっているという。

イスラム教国ブルネイを象徴する「ジャメ・アスル・ハッサナル・ボルキア・モスク」。同国では4月3日から同性愛行為に対する過酷な死刑制度が施行され、人権団体などから懸念の声が出ている。

 イスラム教において同性愛は罪に当たる。だが、その教義をどこまで厳格に適用するかについては国や地域社会によって異なっており、決して一様ではない。例えばブルネイでは基本的に飲酒することもアルコール類を購入することもできないが、マレーシアやインドネシアでは容易に手に入る。またマレーシアやブルネイがイスラム教を国教と定めているのに対して、インドネシアでは6つの宗教を信仰することが認められている。こうした多様性があるにもかかわらず、なぜ足元で同性愛を問題視し、過酷極まりない刑罰を科す動きが各国で広がっているのだろうか。

 宗教を一面的な見方で論じることはできない。ただその背景を探ると、各国に共通する課題も見えてくる。経済的、政治的な不安定要因を抱えていることだ。

 まず3カ国の経済を俯瞰(ふかん)してみる。原油や天然ガスに国家収入の大半を依存しているブルネイは2013~16年の間、原油価格の大幅下落のあおりを受け経済のマイナス成長が続いた。足元では持ち直しつつあるものの、失業率が高止まりしている。現地関係者は「職にあぶれた若者が増え、これに伴い窃盗などの犯罪が目につくようになった」と話す。

 マレーシアでは景気の減速が鮮明だ。2018年の国内総生産(GDP)の成長率は前年比1.2ポイント低下し、今年も鈍化が続くと見られている。前ナジブ政権の不適切な財政運営が元で、GDPに占める債務残高の割合が東南アジア各国と比較して高い水準にある。昨年の総選挙で首相の座に返り咲いたマハティール首相は公共投資の抑制を迫られ、景気の腰折れを招いた。インドネシアもまた通貨安と経常赤字に苦しみ、昨年9月には輸入にかかる税金の引き上げを迫られた。これにより内需が抑制され、2019年のGDP成長率は前年を下回る可能性がある。