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アストラゼネカとの提携について発表する第一三共の中山譲治会長

 2019年3月29日、第一三共はグローバル大手製薬の1社である英アストラゼネカ社と、開発中の抗がん剤DS-8201について、全世界における開発、販売で戦略的に提携したと発表。株価は前日終値の4400円に対してストップ高の5100円となった。

 このDS-8201は、ADC(抗体薬物複合体)と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤だ。かつて、医療用の医薬品はほとんどが低分子化合物と呼ばれる化学品だったが、2000年前後に免疫に関わる生体分子を応用したバイオ医薬品の「抗体医薬」が登場。今や世界の医薬品売上高トップ10のうち5品目は抗体医薬となるなど、一世を風靡した。

 ただ、この抗体医薬と呼ばれるタイプの医薬品の中にも徐々に特許切れのものが出ている。そこで抗体医薬に代わる新しいタイプの医薬品として注目されているのがADCだ。

 ADCは簡単に言えば、抗体に低分子化合物の薬物を結び付けた医薬品。抗体は生体内で病気などに関わるたんぱく質などにくっついて、その働きを妨げる作用を持つが、ADCはそれに薬物を結び付けることでより攻撃的にたんぱく質を攻撃するイメージだ。特許が切れた抗体を利用し、さらに強力な医薬品に改良する手法としても注目されている。

 今回、第一三共がアストラゼネカ社と提携したDS-8201は、HER2というたんぱく質が標的で、表面にHER2があるがん細胞を攻撃するものだ。HER2を標的とするADCには例えばスイスRoche社の「カドサイラ」などもあるが、第一三共独自のADC技術は、1つの抗体に対して8個程度の薬物を結合させられる特徴がある。この数字はカドサイラのほぼ倍で、その分、強力ながん細胞の殺傷効果が期待できる他、周囲のがん細胞を殺傷する効果も期待されている。また、結合する薬物も第一三共が独自に開発したもので、強力な半面、生体内から速やかに消失するので、副作用を減らせる特徴がある。