パスポート(旅券)の更新手続きの一部が、3月27日から国内外を問わずオンラインでできるようになった。申請者は窓口に足を運ぶ必要がなくなり、発給側の事務効率化にもつながるなど、大きなメリットが見込まれる。新型コロナウイルス禍が加速させた「行政手続きのオンライン化」はどこまで進むのか。
今回オンライン化の対象となるのは、①パスポートの有効期間が残り1年未満となった場合、②ビザ(査証)欄の余白が見開き3ページ以下になった場合、の2つだ。一部の府県を除き、「パスポートの発給を初めて申請する」「既に失効している」「戸籍上の氏名や本籍地に変更がある」などといった場合は対象外となる。未成年者は親権者の同意書を提出しなければならない。
従来、紙の申請書で発給を申請する際には、申請時と受取時の2回、窓口に足を運ぶ必要があった。今後はオンライン申請を選ぶことで、パスポートの受取時のみ窓口へ赴けば済むようになる。
オンライン申請には、有効期間内のパスポートのほか、マイナンバー(個人番号)カード、マイナンバーのポータルサイト「マイナポータル」のアプリ、そしてそのアプリに対応したスマートフォンが必要だ。同アプリ上で顔写真や署名の撮影などを行い、必要な申請データを提出すれば、申請が完了する。
これらの措置は、改正旅券法が3月27日に施行されたことを受けたものだ。外務省は法改正の狙いについて、①申請者の利便性向上、②旅券事務の効率化、③旅券の信頼性の向上、④新型コロナウイルスの感染拡大等の社会情勢の変化に対応した制度の見直し――を図るためだとしている。

このほか、パスポートの申請に必要な戸籍は今後、「戸籍謄本」のみを受け付け、「戸籍抄本」は利用できなくなる。また、パスポートの発行から6カ月以内に受け取らない場合、そのパスポートは失効、受け取れなくなる。その上で5年以内に再申請すると、手数料が通常よりも高くなる。
海外でオンライン申請ができるようになったのも、今回の法改正で注目したい点だ。外務省のオンライン在留届(ORRネット)へ登録・ログインすることで可能となる。大使館・総領事館に直接出向くか、FAXで在留届を提出した場合は、まずオンライン在留届に切り替える必要がある。
外務省の旅券統計によると、ここ数年はコロナ禍で海外への移動が制限されたことなどを受け、20年のパスポート発行冊数は前年比70.3%減の133万8904冊。21年は62万8228冊までさらに減った。
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