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 持ち帰りすし大手の小僧寿しが上場廃止の危機に瀕している。食材価格や人件費が高騰する中、既存店売上高が低迷を続けており、2月14日に発表した2018年12月期決算で9年連続となる最終赤字を計上。およそ10億5000万円の債務超過に陥ったため、東京証券取引所が3月27日、19年12月期末までの上場廃止の猶予期間に入ったと発表した。

 同社は全国で持ち帰りすし店の「小僧寿し」や「茶月」など約250店舗をチェーン展開する。設立は1972年。持ち帰り専門店という新しいコンセプトで、すしの「中食」需要を開拓してきた。家庭の食卓で手頃な価格で本格的なすしが楽しめる点が人気を集め、87年には加盟店が全国で2300店を突破した。

巻き返しに向けて、総菜を強化する店舗も増えている

 ところが2000年代に入ると、回転すしチェーンが全国でロードサイドに大型店を出店。こうした店舗の多くが、商品のテイクアウトも始めたため、すしの中食需要を取り合うことになった。

 小僧寿しの社名は、志賀直哉の短編小説『小僧の神様』に由来する。主人公の秤屋の小僧が“高嶺の花”である高価なすしに憧れを抱くシーンが印象的に描かれている。小僧が夢想したであろう、誰でも手が届く価格のすし店を実現するという経営理念を社名に込めた。その通りの価格を前面に出し、事業を広げていった。

 しかし、イートインと持ち帰りの双方を手掛ける大型回転すし店の登場で、小僧寿しの価格競争力は失われていった。回転すし店の多くはイートインで採算が取れるように業態設計されているため、持ち帰り商品は競争力のある価格設定が可能になる。多くの客が来店する大型店は商品の回転が良く、すしネタの鮮度も高い。

 大手回転すしチェーンは、いまや小僧寿しをはるかにしのぐ規模に成長。最大手スシローグローバルホールディングスの18年9月期の売上高は1748億円なのに対し、小僧寿しの18年12月期は55億円。商品の競争力を決める食材の調達力や店舗開発力など多くの面で、「2ケタ」の体力差での競争を強いられている。

 持ち帰りすし店の大手には、吉野家ホールディングス傘下の京樽(東京・中央)がある。1997年1月に会社更生手続開始を申し立て、4月に上場を廃止。2011年に吉野家HDの完全子会社になった。

 京樽は持ち帰り店以外への布石を積極的に打った。1997年11月には回転すし業態の「海鮮三崎港」、2001年には低価格のすし店「すし三崎丸」といった新業態を立ち上げ、今では京樽の業績を牽引している。18年3~8月期の既存店売上高は前年を上回り、堅調に推移している。

 小僧寿しは4月11日に第三者割り当てで新株予約権を発行する。調達資金の多くは、デリバリー機能を強化した新しい店舗の出店費用に充てて、再起を目指す。ただ、回転すし大手も「ウーバーイーツ」などの宅配サービスを相次いで導入している。店舗の大部分を占める既存業態の競争力が低下している中で、今後も厳しい戦いを余儀なくされそうだ。

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