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 ネスレ日本(神戸市)は26日、新しいEコマース事業を6月から全国展開すると発表した。売るのは人間向けの商品ではない。病気になったペット向けの「療法食」だ。

「療法食」とは、犬や猫向けの病気に対応するため特別に調整されたペットフードのこと。専門家のアドバイスや処方に従ってペットに与える。

 食品世界最大手のネスレ(スイス)は、ペットフード大手の買収を重ね、今では「世界最大級のペットフード会社」(高岡浩三社長兼CEO)として知られる。ペットの“健康寿命”を延ばしたいと考える飼い主が増えており、療法食の市場は急拡大している。ネスレも、肥満、腎臓疾患、食物アレルギーなどに対応した犬猫用の療法食を多数ラインアップする。

 ただ、飼い主が自己判断で誤った商品を購入したり、必要以上に長期間与え続けたりするトラブルが絶えず、療法食を与えるだけで獣医の診察を受けさせない飼い主も現れるなどの問題があった。

ネスレ日本の高岡浩三社長兼CEO(最高経営責任者)は、「ペット業界でもデジタルイノベーションを起こす」と語る

 そこでネスレ日本は、各地の獣医師と連携し、動物病院専用のデジタルプラットフォーム「ピュリナ プロプラン ベッツサポート」を立ち上げた。このサイトに登録した獣医師は、ペットの病状に応じて、与える商品や期間を飼い主に指導。飼い主はそれを参考にサイトで商品を注文し、自宅に配送される。

 獣医師にとっては栄養指導で飼い主の来院が増え、ネスレ日本は飼い主が信頼する獣医師が商品購入の指導をすることで販促につながるという利点がある。

 指導・発注・配送の一連の流れは、このデジタルプラットフォーム上で完結する。飼い主は商品を買いに行く手間が省け、動物病院は商品を在庫する必要がない。ネスレ日本にとっては、小売店で商品を売る場合に比べて、バイヤーとの都度の商談や流通マージンなどが省け、経営効率を高められるメリットもある。実は、ここが同社にとっては新サービスの「胆」だった。

 ネスレ日本はこの数年、Eコマース事業を精力的に拡大してきた。専用マシンを使用し、コーヒーなどのカプセルを定期購入してもらう「ネスカフェアンバサダー」(12年開始)や「ネスレ ウェルネス アンバサダー」(17年開始)など、BtoC分野に軸足を置いてきたが、BtoBの分野でも拡大していく。新サービスはその一環だ。同社の2018年12月期の売上高に占めるEコマース事業の比率は17%強。新サービスなどを合わせ、これを「19年末には20%に引き上げる」(高岡社長)。

 もっとも課題もある。Eコマース事業にかかる物流費は人手不足による人件費の高騰などにより、18年12月期の期中に70%も増えた。高岡社長は、Eコマースによって、「経営効率が改善されることで物流コストの上昇は吸収できる」と話すが、ハードルは高そうだ。流通の“中抜き”を加速させるネスレの戦略は、商品の「ラストワンマイル」をいかに確保するかにかかっている。

■変更履歴
本文中で「仏ネスレ」としていましたが、「ネスレ(スイス)」に修正します。本文は修正済みです [2019/3/28 13:19]
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