東急電鉄は3月25日、世田谷線の運行を再生可能エネルギーだけで行う取り組みを始めた。水力発電と地熱発電でつくる電力を東北電力グループから購入し、列車などの動力を賄う。東急によると、100%再生エネで電車を通年運行させるのは国内初めてだ。

世田谷線の電力を再エネで賄うことで、二酸化炭素(CO2)の排出量を1065トン削減できる見込み。25日に三軒茶屋駅(東京・世田谷)であった出発式で東急の巴政雄副社長は「環境にやさしいという鉄道の特徴の上に、運用面の省エネに加えて、新たに調達面での環境対応に着眼した」と説明する。
世田谷線の全長は約5キロメートルと短い。100%を再生エネに切り替えても同社の鉄道事業全体のCO2排出量を0.5%減らせるだけだ。再生エネは通常電力より「おおむね2割ほど高い」(関係者)ため、全面的に導入するのはコストの面から難しい。
それでも東急が一歩踏み出したのは、脱炭素化に向けた取り組みが世界的に加速しているからだ。事業で使う電力をすべて再生エネで賄うことを目指す国際的な企業連合「RE100」は年々拡大。欧米だけでなく中国やインドの企業も相次ぎ加盟している。日本でもリコーのほか、積水ハウスや丸井グループなどが加盟している。
東急は現時点で再生エネの導入に関する明確な数値目標を立てていないが、今後、他路線への拡大を検討する。電力を大量消費する鉄道業界が再生エネの導入を増やせば、普及に拍車がかかる可能性がある。東急に続く鉄道会社は登場するのか。世田谷線の行方が未来を左右しそうだ。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?