
トヨタ自動車とNTTは3月24日、それぞれ約2000億円を出資して株式を持ち合う資本提携を決めたと発表した。両社が持つ最先端の技術・ノウハウを持ち寄り、世界的に激しい競争が続く自動運転技術の開発強化や、ITを活用した街づくり「スマートシティー」の早期実用化につなげる狙い。
自動車業界と通信業界の最大手同士によるタッグだが、過去の経緯から言えば異例の組み合わせだ。そもそも国内の自動車メーカーと通信会社の協業体制は長らく「トヨタとKDDI」「日産自動車とNTTドコモ」「ホンダとソフトバンク」の3陣営でほぼ固まっていたからだ。
中でも関係が深いのはトヨタとKDDIだ。トヨタはKDDIの母体の1つである携帯電話会社、日本移動通信(IDO)の設立に関わり、今も京セラに次ぐKDDIの大株主だ。KDDIは通信機能を備えた「コネクテッドカー」で必要となるグローバルの通信システムを、トヨタに提供している。
ただこの2~3年で、こうした業界秩序を崩してきたのも他ならぬトヨタだ。まず17年にNTTと、5G時代を見据えたコネクテッドカー関連技術の研究開発で協業すると発表。18年にはソフトバンクと新会社、モネ・テクノロジーズを設立し、多様な輸送・移動手段を統合する「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の事業に乗り出した。
通信大手3社と次々に提携関係を結んできトヨタ。だが水面下では、5Gやその次の「6G」など最先端の技術開発に強みを持つNTTグループとの距離を縮めていたようだ。例えばKDDIの牙城であるトヨタのコネクテッドカー向け通信サービスでは17年ごろ、NTTドコモがトヨタ側から内々の依頼を受けて、システムの設計開発や運営などについてコンサルティングしていた経緯がある。
加えて目下トヨタが力を入れるスマートシティー事業を、NTTも今後の成長領域とみて布石を打ってきた。19年7月、NTT持ち株会社の完全子会社として発足したNTTアーバンソリューションズ。傘下に不動産開発のNTT都市開発とNTTファシリティーズを収め、不動産事業でグループの中心的な役割を担う。
同社はIoT(モノのインターネット)をはじめデジタル技術を活用し、ビルのエネルギー管理の最適化や災害に強い安心・安全な街づくりなどを成長の柱にしていく方針を打ち出している。自動車業界を舞台とした国内通信各社の陣取り合戦が激しさを増している中で、今回はNTTの包括的な取り組みがトヨタを射止めたもようだ。
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