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 3月20日、欧州エアバスは本社がある仏トゥールーズで、超大型機「A380」の全日本空輸(ANA)への納入式を開いた。青空の下、ANA向けに外装にウミガメをあしらったA380が姿を表した。式典でANAホールディングスの片野坂真哉社長は、エアバスのトム・エンダース最高経営責任者(CEO)と握手を交わした後、同機に乗り込み、午後4時半頃にトゥールーズ空港を飛び立った。

3月20日の納入式に顔をそろえた欧州エアバスのトム・エンダースCEO(写真右)、ANAホールディングスの片野坂真哉社長(中央)、英ロールスロイスのクリス・チョラートン民間航空部門プレジデント(左)。片野坂社長がヘリコプターの運航から始まった全日本空輸の歴史を紹介すると、エンダースCEOはかつて自らがヘリコプターのパイロットだったことを話していた

 これは両社にとって大きな意味のある納入だ。ANAは経営破綻したスカイマークの再建策をまとめるに当たり、将来のA380の発注の可能性を打診し、大口債権者のエアバスの協力を取り付けたともいわれている。エアバスは需要が伸び悩む同機の受注を維持すると同時に日本での存在感を高めることができた。

 ANAは超大型機を海外市場拡大の切り札にする。5月24日から日本ーハワイ路線に投入する。同路線は日本航空(JAL)の牙城であり、座席数で3分の1程度のシェアを持つ。そこにANAは戦略機種をぶつけて、20年度にはシェアを25%まで拡大することを狙う。

 A380は520もの座席を設定している。ANAの機内には入れなかったものの、エアバス本社内のモックアップを見学した。非常に大きな室内空間があるため、多様な座席レイアウトができる。

 ファーストクラスのぜいたくさが目立つが、エコノミークラスも注目されている。特に1階のエコノミークラスに座ると広さを実感できる。通常の航空機は円形状であるため、窓際に行くほど座席の天井が低くなるが、1階の窓際席の上でも高さが十分にあり、身長170センチの記者が立っても天井に頭が付かなかった。天井の高さは開放感につながる。ただ2階のエコノミー座席の天井は高くなかった。

 A380は今回で15社目の納入式になるが、エアバス関係者は「今回は特に気合が入っていた」と語る。というのも、これが最後の納入式になるからだ。

 A380が初就航した2007年ごろは、ハブ空港の間で多くの旅客を一度に運ぶ需要が高まっていた。しかし、エアラインは徐々に旅客の需要変動に合わせて路線やスケジュールを組むようになり、市場が中小型機にシフトしている。大型機の需要が減少し、エアバスは21年以降にA380の生産・納入を終了する。トム・エンダースCEOはANAに対し、「A380の運航をサポートし続けることを約束する」と語った。