LIXILグループの潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)と山梨広一COO(最高執行責任者)の取締役解任を目的として、大株主の機関投資家らが臨時株主総会の開催を請求した。その株主陣営に加わったのが、衛生陶器大手で旧INAX創業家の伊奈一族だ。現LIXILグループ取締役の伊奈啓一郎氏を含め、伊奈一族がそろって潮田氏に反旗を翻した。潮田氏はいわば身内からも刃を突き付けられたと言える。

潮田氏らを解任するための臨時株主総会を請求したのは、英マラソン・アセット・マネジメントら機関投資家4社。実はこの4社だけでは、「株式を議決権で3%以上、かつ6か月に渡り保有している」との条件を満たさない。この状況に協力したのが伊奈啓一郎氏。それでもまだ足りないため、啓一郎氏の家族や親族の一部、さらに伊奈家から過去にLIXIL株の寄贈を受けた愛知県常滑市までもが臨時株主総会の請求権者に名を連ねた。常滑市は旧INAXが本社を置いていたINAXの城下町でもある。
伊奈啓一郎氏は潮田氏らとともにLIXILグループの一員だが、なぜ反旗を翻したのか。機関投資家らが怒りを募らせているのは、昨秋の瀬戸欣哉前CEOの「強引な解任過程」。伊奈氏はその取締役会で瀬戸氏の辞任に反対している。伊奈氏自身は「このガバナンスを無視した手法に驚き、反対しましたが、止めることができず、同時に無力さをも感じていました」とコメントしている。
また、2月に発表された瀬戸氏の解任過程を調査した第三者による調査報告書を全文開示するかどうかについても、伊奈氏は取締役会で「全文開示」を主張したようだが、結果は会社による要約版の開示にとどまっている。「数の論理」で潮田氏らに押し切られ続け、伊奈氏がガバナンスを是正しきれないという苦悩を抱えていたところに、マラソンらによる臨時株主総会請求の動きが出てきた。伊奈氏は「会社のガバナンスをより正しい方向に向かわせたい」として、LIXILグループ取締役という身内でありながら、株主の動きに協力することを決めた。

はたから見れば、LIXILグループの中核をなす旧トステムと旧INAXの創業家同士の対立にも映りかねない。ただ伊奈氏は「旧トステムと旧INAXの対立とはとらないでほしい」とコメント。「LIXILのガバナンスを是正したい」という思いに、どちらの会社出身という考え方はないからだ。旧INAX首脳も「今回は潮田さんの問題。トステムが問題ということではない」と口をそろえる。
身内からも不満が噴出した格好の潮田氏。この事態をどう収束させていくのだろうか。あまり時間はない。
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