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 「消費税の引き下げはあり得ない。(実施までの間に)買い控えなどが起きて逆に悪影響を及ぼす可能性すらある」

 米連邦準備理事会(FRB)が突然、1%の利下げと金融緩和を決めた3月16日(米国時間15日)、ある財務省幹部は株式市場などに広がる消費税引き下げへの期待に対して、強く否定した。

米FRBのパウエル議長は緊急利下げを決めた(写真:ロイター/アフロ)
 

 FRBの緊急利下げは、新型コロナウイルスの感染拡大により米景気の先行き懸念が広がってきたことから、金融市場の安定化のために力強い対応を示そうとしたものだ。市場関係者からは「近いうちに実施されると見ていたが、1%という利下げ幅は予想より大きかった」(クレディ・アグリコル証券の森田京平・チーフエコノミスト)と、ある程度評価する声が出ている。ただ、問題はむしろこれからだ。

 日欧の主要中央銀行はFRBと協調し、ドルの流動性供給を拡充する策を公表。加えて日本銀行は16日、臨時の金融政策決定会合を開き、上場投資信託(ETF)の買い入れ量を現行の6兆円から12兆円へ増額することや、企業の資金繰り支援のために金融機関に低利の資金供給を行う新たな企業金融支援の仕組みを創設することを決めた。企業への貸出支援の基金は現在、成長を目指す企業への投融資を実施する金融機関向けに設けられているが、今回は新型コロナの影響で業績が悪化している企業への融資を狙うものだ。

 「マイナス金利を深掘りすることは地銀などの経営への影響が大きく、難しい」(UBSウェルス・マネジメントの青木大樹・チーフエコノミスト)中で、取り得る政策を「総動員」した形だ。それでも金融政策では効果が限られるとの見方が強く、「今は景気下支えのためにどのような財政政策が打ち出されるかに注目が集まっている」(クレディ・アグリコル証券の森田氏)。

 そこで市場関係者などに取り沙汰されているのが、消費税の引き下げだった。昨年10月の10%への引き上げ後、2019年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比で年率7.1%減へ大きく落ち込んでおり、増税が消費を冷やしたと見られたためだ。

 ただ、19年10~12月期は暖冬で冬物衣料などの消費が落ち込み、前半は大型台風の襲来で企業活動が停滞した影響も大きいだけに、増税だけが問題だったとは言いにくい。当面、想定される財政政策として、インバウンド需要の落ち込みで苦しむ観光業への支援や、休業により所得が減少する従業員やフリーランサーへの所得給付、中小企業の信用補完などが上がっている。

 しかし、世界に新型コロナウイルスの流行が広がる中で、景気停滞を止めるにはやや力不足にも見える。岐路に立つ景気を支える方法はなかなか見えてこず、消費税引き下げを望む市場の声は簡単には消えそうもない。

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