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米中貿易協議に大きな影響を及ぼす「外商投資法」が成立した

「賛成2929票、反対8票、棄権8票」

 3月15日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代)。外商投資法が通過した瞬間、記者席からはため息が漏れた。全人代は国会に相当すると言われるが、そこで法案が否決されることはなく、事実上、中国共産党の決定を追認する機関だ。とはいえ、米中貿易協議の行方を左右する重要法案が正式に成立した意味は大きい。

 外商投資法では、米中貿易協議で焦点の一つとなっている技術移転の強制について「行政機関とその職員が行政手段を利用して技術移転を強制してはならない」と記した。知財分野では「国(中国)は法により外国企業の知的財産権を保護する」とも記している。昨年12月に原案を公表してから3カ月という短期間で法案を成立させた背景に、米国への意識があることは間違いなく、これまでより一歩前進と評価されている。

 トランプ米大統領は中国を交渉の土俵に引っ張り出し、そこで得た成果を持って来年の大統領選に挑む狙いとされる。中国政府としてトランプ大統領に花を持たせた形だが、これが実質的にも譲歩と言える内容なのかは不透明と言わざるを得ない。

全人代は北京の人民大会堂で開かれた

 中国ではこれまで、政府が表だって外資系企業に技術移転を強制していたというより、外資系企業が合弁相手の中国企業の求めに応じて技術移転をしなければ、政府から工場の許認可が下りないというのが実態だった。法案を巡る議論の過程では、外資系企業から「非政府部門による強制も禁止すべき」との意見が上がったが、法律の文言に反映されることはなかった。

 李克強首相が全人代開幕時の政府活動報告でハイテク産業育成戦略「製造2025」に触れなかったのも同じ。米国に配慮したものであることは間違いないが、声高にいわずとも粛々と実行すれば実際の利益を失うことはない。

 名を捨てて実を取る。中国の交渉術のしたたかさが、今回の全人代からは透けて見える。

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