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 伊藤忠商事によるデサントへのTOB(株式公開買い付け)が14日、最終日を迎えた。デサントの反対表明により、日本では異例の敵対的TOBが繰り広げられてきたが、その結果がまもなく判明する。TOBは成立が濃厚で、結果としてデサントは土俵際に追い詰められることになりそうだ。だが感情的にこじれた両社の関係修復は困難を極めており、伊藤忠にとっても先行きは難路が予想される。消耗戦はいつまで続くのだろうか。

伊藤忠との関係修復は困難を極めている(写真=水野浩志)

 伊藤忠はデサント株を3割持つ筆頭株主だ。その保有比率を4割に高めるため、14日までTOBをかけている。買い付け価格はTOB発表前の株価に5割のプレミアム(上乗せ価格)を付けた破格の条件で、市場関係者の間では伊藤忠は4割の株を確保するとの見方が大勢を占める。TOBの結果は伊藤忠から15日にも発表されそうだ。

 今回のTOBが注目を集めたのは日本では異例の敵対的TOBになったからだ。過去、上場企業同士の敵対的TOBが成立した例はほとんどない。伊藤忠によるTOBは過半数の株を取りに行く買収ではなく10%の買い増しにとどまるため成立しやすい。敵対的TOBをかけている側の狙い通りに進むこと自体が日本では異例となる。

 そもそもなぜ伊藤忠とデサントの関係はこじれたのか。過去に独アディダスとのライセンス解消などで2度経営危機に陥ったデサントを救ったのはいずれも伊藤忠だった。

 デサントは経営が安定してくると「自らの力で稼げるようになった」(石本雅敏社長)という自負を強める一方、伊藤忠が自社のネットワークを活用するように迫ることを「押しつけ」ととらえ始めるようになる。伊藤忠側は「経営危機を救った恩を忘れたのか」(幹部)という不満が募るが、デサント側は「押しつけに耐えており恩は返した」(関係者)と考えている。

 2013年には創業家の石本雅敏氏が伊藤忠から派遣されていた社長を押しのける形で社長に就任。両社の不信感は増幅し、決定的な対立に発展したのが昨年だ。伊藤忠の岡藤正広・会長兼最高経営責任者(CEO)が石本社長と会談し、経営方針を批判している。その後は不信の連鎖が繰り返され、デサントが伊藤忠に相談することなくワコールホールディングスと提携、伊藤忠はデサントに通告せずにデサント株を買い増した。