英議会下院は13日、政府が提出した「欧州連合(EU)からの合意なき離脱に反対する」動議を賛成多数で可決した。合意なき離脱を回避するための対応として、3月末の離脱時期を延期するか否かを14日に採決し、可決される公算が大きい。だが延期しても企業が望むような条件は得られそうもない。

 合意なき離脱となれば、国境での通関手続きなどに時間がかかって物流が滞るなど、国民生活や企業活動が混乱に陥る可能性があった。今回の採決でひとまず最悪の事態を回避した。他の主要通貨に対してポンドは値上がりし、市場も好感している。

 ただ見逃せなかったのは、動議に先立って与野党超党派の議員グループが提案した修正案に対する採決だ。「いかなる状況でも合意なき離脱を否定する」という修正案について、賛成312票に対して、反対308票と非常に僅差だった。「状況によっては合意なき離脱もやむなし」と考えている議員が半数近くいることになり、この意味合いは大きい。

 合意なき離脱となれば、企業活動への影響は不可避だ。その企業が最も恐れるシナリオを、英議会下院の半分近くが受け入れる可能性がある。メイ英首相がEUと決めた離脱協定案を前日に否決したことも含め、英議会に対する企業の怒りは最高潮に達している。

 英最大の経済団体である英産業連盟(CBI)のキャロリン・フェアバーン事務局長は13日、「もうたくさんだ」と吐き捨てるようなコメントを発表。「これが失敗した政治の最後の日にならなければいけない」と怒りを露わにした。

英議会下院はEU離脱について議論を尽くすほど、混迷が深まる (写真:ロイター/アフロ)
英議会下院はEU離脱について議論を尽くすほど、混迷が深まる (写真:ロイター/アフロ)

  企業は延期による新たな展開に期待できるかというと、そうでもない。延期になれば英議会がさらに迷走し、社会経済の不安定な状況が続く可能性があるからだ。

 例えば、混乱が続いた場合、買い控えなど自動車市場が冷え込む可能性がある。2018年の英新車販売台数は、前年比7%減の236万7147台だった。英自動車工業会(SMMT)は、ブレグジットの先行きが不透明なことも消費者の購買意欲を削いだと見ており、19年もこうした状況が続くかもしれない。

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