明治は13日、乳児用液体ミルクを3月下旬から一部施設で先行発売し、4月下旬には全国で売り出すと発表した。開封後にそのまま乳児に飲ませることができる液体ミルク。5日には江崎グリコも発売したが、なぜ、今、液体ミルクなのか。

液体ミルクは海外では一般的な商品だ。開封後にそのまま飲めるのが特徴で、災害備蓄品としても需要がある。明治によると、世界の乳児用ミルク市場のうち、液体ミルクが占める割合は10~20%ほどだという。
そんな海外では当たり前のように流通している液体ミルクがなぜ、ここに来て日本で発売が相次ぐのか。
そもそも、これまでは国内で液体ミルクを販売することができなかった。国内で乳児用食品を販売するには、消費者庁による乳児用食品の表示許可を得る必要がある。ところが、厚労省が定める「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」では液体ミルクというカテゴリーそのものがなかった。
業界団体はかねて厚労省などにこの省令の見直しを求めてきたが、議論は進まない。そんな時に発生したのが2011年3月11日の東日本大震災だ。支援物資として海外から液体ミルクが運び込まれ、液体ミルクへの関心が急速に高まった。消費者による署名活動や、日本小児科学会などが液体ミルクの国家備蓄を内閣府に要望するなどの運動が起きた。こうした動きを受け、政府は16年10月に液体ミルク解禁に向けた議論を開始。18年8月に厚生労働省の省令が改正され、国内での生産が可能になった。

今回、国内で液体ミルクの製造・販売が認められたのは、明治のほか、江崎グリコだ。明治は国内における液体ミルクの市場規模を30~60億円と予想しており、小規模な市場で、大きな利益貢献は見込みにくい。それでも明治の松田克也社長は13日の発表会でこう強調した。「利益は伴わないといけないが、社会的使命として、明治にしかできないことをやる。消費者が液体ミルクの簡便さを実感し、市場がより成長することを期待したい」。
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