「メイ英首相の離脱案は明らかに死んだ」(英労働党のコービン党首)ーー。

 英議会下院は12日、欧州連合(EU)からの離脱案を採決し、大差で否決した。メイ英首相は前日の夜12時近くまでEUのユンケル欧州委員長と会談し、離脱案を修正したが、英議会を説得できなかった。1月15日の採決に続く2回目の大差での否決でメイ首相が推す穏健な離脱は、完全に選択肢から消えた。英下院は3月13日に合意なき離脱の採決、14日に離脱延期を採決する。

激務とストレスからか、12日のメイ首相は喉を痛めガラガラ声だった (写真:PRU/AFP/アフロ)
激務とストレスからか、12日のメイ首相は喉を痛めガラガラ声だった (写真:PRU/AFP/アフロ)

 今回の否決は、英議会からメイ首相への最後通牒と言っていい。メイ首相は昨年11月にEUとの間でアイルランドとの国境管理の回避策として英全土を関税同盟に残す案を含めた穏健な離脱案をまとめた。それ以降、一貫してこの案にこだわり、心中する覚悟を見せていた。

 そして、議会に対して「私の案か、合意なき離脱か」と迫り、合意なき離脱という最悪の事態を交渉の切り札にした。当初は12月が採決の期限と見られていたが、ズルズルと採決を遅らせ、離脱日のわずか17日前に採決をする状況に追い込んだ。

 採決が遅れている間に、離脱後の惨状を想像させるような悪いニュースが相次ぐ。日産自動車が主力車種の英国生産を撤回し、ホンダが2021年中に英国生産から撤退すると発表した。

 メイ首相は「合意なき離脱」という最悪のカードをちらつかせることで、強硬離脱派に翻意を促してきた。労働党などから「合意なき離脱」の選択肢を外すように迫られても、頑として譲らなかった。

 だが、結果的にはこうしたメイ首相の「脅迫戦略」は大失敗に終わる。メイ首相の思惑とは逆に離脱強硬派は態度を硬化。むしろ合意なき離脱を望むような雰囲気を作ってしまった。

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