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中国の製造業では生産再開の動きが広がっている(写真:新華社/共同通信イメージズ)

 日本工作機械工業会(東京・港)が3月10日に発表した2月の工作機械受注額(速報値)は前年同月比30.1%減の767億円だった。2月単体の受注額としては、リーマン・ショック後の回復期だった2010年2月の647億円以来となる低水準だ。2月は新型コロナウイルスの影響が全世界に広がっておらず、日本でも感染拡大防止のための在宅勤務や時差出勤などの呼び掛けが本格的に始まっていなかった。3月に入ってからは、世界的な株安や渡航自粛など影響が広がっており、工作機械の受注にさらなる影響が出る可能性がある。

 国内向けは前年同月比23.3%減の319億円だったが、1月の受注額は上回った。日工会は「(設備投資を支援する政府の)補助金の効果はまだ出ていないが、一部の資金に余裕がある企業が計画的に設備投資に動いているのかもしれない」と指摘した。対照的に海外向けは前年同月比34.2%減の447億円で、1月に比べて64億円減少。海外向けが450億円を下回るのは10年1月以来となる。

 2月の受注額の詳細な内訳は3月24日に発表されるが、海外向けの大幅な減少は新型コロナの影響とみられる。中国は感染拡大防止のために、国内で移動規制や春節休暇の延長などを実施しており、経済活動にも影響が出ていた。

 日本の工作機械メーカーでも工場の再稼働が遅れたり、移動規制によって商談活動ができなかったりといった影響が出ている。ある中堅工作機械メーカーは「中国の自動車部品メーカーで引き合いがあったが、一時休止になった」と話す。

 2月の受注額では新型コロナの影響は中国向けが中心だったとみられるが、3月はその影響が全世界に広がる可能性がある。

 国内は2月27日に政府が大規模イベントの中止・延期の要請、全国の小中学校と高校などに一斉休校を求める考えを表明して以降、企業の在宅勤務が加速。機械業界では国内出張を原則禁止にする会社も多い。

 株価の大幅下落によって、景気の先行き不透明感は高まっており、設備投資を見合わせる動きが加速する懸念もある。ある機械メーカー幹部は「企業活動の停滞と合わせて、受注への影響は避けられそうにない」と指摘する。

 野村証券は3月10日、2020年上期の世界の自動車の需要は前年同期比10~15%減少する見通しだと発表した。特に影響が大きいと予想しているのは欧州で、20年の自動車需要を従来予想の前年比6%減から同11%減に下方修正した。

 DMG森精機は3月2日から3日間、ドイツ南部フロンテンの拠点を閉鎖した。従業員1人が新型コロナに感染していたことによる措置だ。日本の工作機械メーカーの欧州拠点でも影響は広がっており、受注活動への影響も懸念される。

 単月の受注額が1000億円を超えるか否かが好不況の目安とされる工作機械業界において、19年8月以降、受注額は1000億円を下回り続けている。年始の賀詞交歓会の時点で「今年は辛抱の年になりそう。各社の経営体力が問われる1年になる」(中堅工作機械メーカー幹部)という声があったが、新型コロナの影響が全世界に広がり、受注が上向く要因はますます見当たらない状況だ。すでに一部のメーカーでは受注残は底をつき始めており、厳しい冬を乗り越えられない企業も出てきかねない。

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