背景には成長の鈍化への危機感がある。今もってグーグルとフェイスブックの2社で米国のインターネット広告市場の60%を占めるガリバーであることは変わらないが、同社にとって気がかりなのはユーザーの減少だ。個人情報の大量流出やターゲット広告を通じたユーザー情報の共有に批判が集まったこと、若年層を中心としてよりプライベートを重視したサービスに移行する動きがあることなどを背景として、北米や欧州で利用者数の伸びが鈍化、一時、減少した。

 戦略転換表明に含まれる柱の1つはメッセージの暗号化。既に暗号化を実施している傘下の対話アプリ「ワッツアップ」と同様に、暗号化されたメッセージを「フェイスブック」や「ワッツアップ」、写真共有サイト「インスタグラム」の中核プラットフォームで相互にやりとりできるようにする。一定期間が経過した後、メッセージが消える機能や履歴消去機能も拡充する。いずれも個人情報に対するユーザーの懸念に対応した措置だ。

 どこまで共有するかはユーザーに委ねられているが、フェイスブックは自分の投降を広く共有し、相互につながることのできる「公共の広場」として成長してきた。グローバルの月間ユーザー数が20億人超というお化けプラットフォームに変貌したのも、「誰かとつながりたい」という人間の根源的な欲求をデジタルの世界で満たしているからだ。

 一対一に閉ざされた場ではなく「公共の広場」を提供することで、そこに広告主が介在する余地が生まれる。ユーザーがどんな投稿に反応を示したか、誰と(どの企業・商品・サービス)と繋がっているかを把握できるからこそ、効率よい広告表現が可能になる。コミュニケーションを一対一に閉ざしたり、閲覧履歴を消去できるようにしたりなどプライバシーを重視すればするほど、こうした広告事業上の強みを同社は失うことになる。同社にとって事業上の「顧客」は、ユーザーではなく広告主であるにも関わらずだ。

 ザッカーバーグCEOはウォールストリートジャーナルのインタビューで、今回の個人間メッセージの強化が従来のフェイスブックに取って代わるものではないと述べている。とすればフェイスブックはフェイスブックとして引き続き存在するので何も変わらないと見ることもできるが、「オープン」を是としてきたフェイスブックの歴史を考えれば、コペルニクス的な転回である。

 ただし、新しい写真投稿サイトのピンタレストなど小売りの世界で注目を集める企業もあるが、フェイスブックの代わりとなる広告プラットフォームは今のところ存在しない。しばらくは最強の“広告マシン”として君臨し続けるのではないか。それに取って代わるとすれば、アマゾン以外に思いつかない。

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「キーエンスOBが明かす強さの根源」、全3回ウェビナー開催

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■第2回:6月2日(木)19:00~20:00(予定)
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■第3回:6月16日(木)19:00~20:00(予定)
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