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(写真:新華社/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、国内の建設機械や工業機械業界では中国市場の先行きに注目が集まっている。「中国政府にとって国内景気の低迷は死活問題。必ず景気刺激策をやるだろう」。ある建機大手幹部はこう話す。新型コロナウイルスの感染拡大が終息する時期が不透明な状況にもかかわらず、建機業界が景気刺激策を意識するのには訳がある。

 2月25日に開かれた日本建設機械工業会の会見で、小川啓之会長(コマツ社長)は厳しい表情でこう語った。「中国における建設機械の年間需要のうち、3~4割は春節明けに発生するが、2月末段階ではほとんど出ていない。本来、発生するはずの需要が後ろにずれるのか、消えるのか、注視する必要がある」。

 工作機械も状況は同じだ。日本工作機械工業会の飯村幸生会長(東芝機械会長兼CEO)は2月20日の記者会見で、「ウイルスの影響による中国市場での営業機会の損失などで受注が細る可能性は否めない。部品の欠品対応などを考えると、反転時期が最低3カ月は後ろにずれそう」と見通しを述べた。

 ある中堅工作機械メーカー首脳は「中国向けはこの1年ずっと落ち込んでいて、年末ぐらいに少しずつ引き合いが増えてきたところだった。そうした動きが止まっている」と話す。3月10日に発表される2月の工作機械受注額(速報値)には新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出ることが予想され、それがどの程度かが注視されている。

 中国では感染者の増加数がピークを越え、減少傾向にある。一時は滞っていた物流も、「一部地域を除けば、動き始めている」(工作機械業界関係者)。コロナウイルスによる中国経済への影響は2003年のSARS を上回るとの声もあり、中国政府が景気刺激策を打ち出すと予測する声は強い。

 しかし、景気刺激策が発動されても、日本勢が失った営業機会を取り戻せるかは未知数だ。中国の建機市場では現地メーカーのシェアが高まっており、前出の建機メーカー幹部は「中国メーカー比率がさらに高まる可能性がある」と警戒する。景気刺激策が発動されても外資系メーカーが恩恵を受ける機会は少ないのではないかとみる声が多い。そうなると、本来獲得できたはずの春節明けの需要を取り戻すことは難しい状況で、中国戦略の見直しを迫られかねない。

 建設機械と比較すると、工作機械は5Gや半導体関連など加工する製品の高精度化といった日本メーカーの追い風になりやすい条件がそろっているが、油断は禁物だ。中国における工作機械需要は18年秋から低迷が続いていたため、「落ち込みの谷が深く、長かった分、需要拡大の跳ね返りの山が想像以上に高くなる可能性がある」(中堅工作機械メーカー首脳)。

 そのため懸念されているのが部品不足だ。過去最高の受注額を記録した18年には、主要調達部品が不足し、生産遅れによる納期の長期化などが発生した。中国市場の急回復で、同じような状況による受注機会の損失などを危ぶむ声もある。

 新型コロナウイルスの感染拡大がある程度終息しても、世界経済が落ち着きを取り戻すまでに時間がかかるのは避けられない。需要回復が期待される中国と、感染拡大が止まらない日本国内。相反する状態への対応が求められるだけに、各企業にとっては厳しい状況が続きそうだ。