会社のあるべき姿を記した“経営理念”。不祥事を起こした企業がしばしば求められるのが、経営理念に書かれた基本姿勢を取り戻すことだ。2019年9月に金品受領問題が発覚した関西電力は、20年3月に就任した森本孝社長を先頭に「内向き体質」の脱却に向けた改革を進めてきた。原発の再稼働が最優先事項になってしまったことが金品受領問題を招いた関電が、経営理念を刷新する狙いとは。

関西電力の森本孝社長(写真:菅野勝男)

 「就任直後、社員からは『絶望した』という声がたくさん届いた。そうした声に耳を傾け、どんな会社にしていくのか。それを社員と一緒に考え続けてきた1年だった」

 金品受領問題の発覚から約半年後の20年3月、当時の岩根茂樹社長の引責辞任に伴って急きょ就任したのが森本社長だ。処分者は当時の会長、社長を含め80人以上に上った。役員の中から金品を受領していない「白」のメンバーを探す方が大変なほど。当時副社長で「白」の1人だった森本氏に白羽の矢が立った。

「関西電力の金品受領問題」とは

 関西電力の原発立地地域である福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(死去)から経営トップら約80人が総額3億6000万円相当の金品を受領していた問題。この問題を調査した第三者委員会によると、金品の受領は森山氏が助役を退任した1987年に始まり2010年代まで続いた。

 事実は一部報道により明らかになったが、関電はそれまで「違法性がないこと」などを理由に社内調査の内容を公表していなかった。関電は結果の公表のみで幕引きできるとみていたが、社会からの批判の声は予想以上に強く、会長、社長が辞任に追い込まれた。

 20年6月、関電は同問題で善管注意義務違反があったとして、八木誠前会長、岩根茂樹前社長、森詳介元会長、豊松秀己元副社長、白井良平元常務の旧経営陣5人を相手に計19億3600万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴した。

「このままでは会社がもたない」

 「平成や令和の時代にそんなことが起きていたなんて。まるで昭和のできごとだ」。原発立地地域を舞台に起こった金品受領問題は、電力業界をはじめとする経済界を震撼(しんかん)させた。世間からの風当たりももちろん強かったが、森本社長をトップとする経営陣らが最も危惧したのが、若手社員を中心とする相次ぐ離職だ。

 「このままでは会社がもたない」。作業員5人が死亡した04年の美浜原子力発電所3号機の事故など、これまでも大きな事故はあった。ただ、今回の不祥事は組織を分断しかねないレベルにあった。森本氏は「関電に将来はあるのかと不安を感じる社員が多くいた。それと同時に、役員の不祥事に強い憤りを示していた」と振り返る。

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