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 中国の第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相は政府活動報告で、2019年の実質国内総生産(GDP)の成長率目標を「6.0~6.5%」に設定。18年目標の「6.5%前後」から引き下げた。

5日午前、開幕した中国の第13期全国人民代表大会第2回会議(全人代、北京の人民大会堂)

 習近平指導部は既に減速を織り込みながら経済財政運営に取り組んでいるはずだ。一方で18年のGDPは名目で前年比9.7%増の90兆309億元(約1500兆円)に達している。ここまで経済規模が拡大する中で成長率の伸びが鈍化すること自体にも、それほどの驚きはない。

 むしろ重要なポイントは「言わなかったこと」にあるようだ。今回で言えば「中国製造2025」がそれに当たる。2015年の全人代で李首相が実行を宣言してから毎年欠かさず言及してきたハイテク産業育成策に、今年は触れなかった。

 背景には明らかに米国への配慮がある。当初3月1日を期限としていた米中貿易協議が延期され、トランプ米大統領と習国家主席の会談は月内にも開催するとみられている。ただし、そこで交渉がまとまらなければ、さらなる高率関税の掛け合いという最悪のシナリオが現実化しかねない。微妙な状況下で、米国を刺激したくないという思惑が透けて見える。

 もっとも中国が重要な国家戦略を取り下げたわけではない。むしろ、1990年代に最高指導者だった鄧小平氏が言った、才能を隠して時宜を伺う「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれる路線に回帰したと見るのが妥当だろう。そもそも米国との対立が先鋭化する中で、中国の産業界からは「わざわざ中国製造2025などと正面から挑戦状を叩きつけるような真似をする必要はなかった」との不満が漏れていた。

 米中貿易摩擦の影響は、現時点ではまだ限定的だ。ただし、中国に進出している米国企業の間では実際に設備投資を手控える動きが出ている。交渉決裂となれば、安全保障面などでも緊張が高まる可能性もあり、世界経済にとって最大リスクの一つと言える。

 全人代で成立が見込まれる外資企業の中国投資に関する基本法「外商投資法」には、米国などが批判する技術移転の強要の禁止や、知的財産権の保護についても明文化される見通しだ。全人代は米中貿易摩擦の今後の方向性を占う上でも重要な舞台となる。

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