「衝撃的なプランを実現し、携帯電話サービスを民主化していく」

 楽天子会社の楽天モバイルが3月3日に開催した記者会見。三木谷浩史会長兼CEO(最高経営責任者)は4月8日から正式に始める携帯電話サービスについて、こう表現した。

 同社がこの日発表した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT(楽天アンリミット)」は、データ通信が“完全使い放題”で月額2980円(税別)。大手携帯電話会社の同様プランの半額程度に抑えたのが特徴だ。加えて最大300万人までは当初1年間の月額料金を無料にするキャンペーンも実施し、携帯大手や格安スマートフォン会社からの早期の顧客獲得を狙う。

1年間の無料キャンペーンを発表する楽天モバイルの三木谷浩史会長兼CEO

 楽天モバイルの携帯電話事業をめぐっては様々な試練が続いてきた。商用サービスの開始時期と表明していたのは19年10月。ところがサービスの要となる「基地局」の設置工事が遅延し、商用化を20年春へと延期した。代わりに始めた試験サービスでは19年12月10日午前、約3時間もの通信障害が発生し、1月14日に再発防止策を総務省に提出していた。

 そんな紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、いよいよ正式サービスを始める楽天モバイル。携帯大手に比べ割安感のある料金プランや大盤振る舞いのキャンペーンで勝負をかけるが、その内容を細かく見れば後発ゆえの「ジレンマ」もにじみ出る。例えばデータ通信が「完全に使い放題」になるとうたいながら、地方などで利用すると通信容量の上限がわずか2ギガバイトに抑えられる点だ。

 なぜこうした条件を付けているのか。背景にあるのは未成熟な楽天モバイルの通信インフラだ。

 現在、楽天モバイルが自前の基地局を展開するのは東京23区や神奈川・埼玉・千葉県の一部、大阪市、京都市など。その他の地域やビル、地下街などではKDDIの基地局を借りる「ローミング」と呼ばれる方式で全国をカバーするが、これで楽天がKDDIに支払うローミング費用は1ギガバイト当たり約500円かかる。つまり利用者が楽天モバイルのエリア外で6ギガバイト程度使うだけで「楽天アンリミット」の月額2980円を超え、足が出てしまうわけだ。

楽天モバイルが3日発表した携帯電話サービスの詳細

 目玉のはずの料金プランに設けられた厳しい制約。業界内には早くも「エリアが広がってくる1年後まで(現在提供している)無料の試験サービスを継続するようなもの」(携帯大手関係者)などと厳しい声が上がっている。日本における携帯電話サービスの通信品質の高さやエリアの広さは世界有数とされる。楽天モバイルは計画を上回るペースで全国に基地局を設置していくというが、携帯大手に遜色ない通信品質を確保するのは容易ではない。

 金融筋からは「『300万人に1年間無料』のキャンペーンを展開することで携帯事業が収益に貢献する時期がかなり先になる。3年後の黒字化を目指すと言ったが、実現できるかどうかは疑わしい」(国内証券アナリスト)との声も出ている。親会社である楽天の自己資本比率は15年12月末時点では15.5%だったが、携帯事業への本格参入などで投資がかさみ、19年12月末時点では8.0%と1桁台にまで悪化した。本丸のネット通販「楽天市場」でも、物流網の整備に10年で2000億円を投じる方針を示しており、財務のもう一段の悪化も懸念される。

 かつてソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は携帯電話事業を「金の卵を産むガチョウ」と表現したが、当初は、買収した英ボーダフォン日本法人という土台がありながらも通信品質の確保やエリア展開に苦労した。楽天モバイルはそんな土台のないところからの立ち上げとなるが、かさむ先行投資にどこまで耐えられるか。

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